劇場型首長の戦略と功罪 の商品レビュー
田中康夫、東国原英夫、橋下徹、河村たかし、竹原信一という5人の「劇場型首長」を取り上げ、劇場型首長の戦略と功罪をポピュリズムの観点から分析している。 劇場型首長の戦略としては、「自分の立ち位置を一般の人々の側とし、既得権にしがみつく既存勢力、たとえば議会や国・役人などを敵と設定し...
田中康夫、東国原英夫、橋下徹、河村たかし、竹原信一という5人の「劇場型首長」を取り上げ、劇場型首長の戦略と功罪をポピュリズムの観点から分析している。 劇場型首長の戦略としては、「自分の立ち位置を一般の人々の側とし、既得権にしがみつく既存勢力、たとえば議会や国・役人などを敵と設定し、自分をそれらと戦うヒーローとして、政治・政策課題の解決を進めようとする政治スタイル。そのとき、一般の人々と自分を、マスメディア、特にテレビを利用して直接結びつけ、政治・政策課題を単純化したり劇的にみせることにより幅広い支持を得ようとする政治手法をとる」と指摘している。 また、劇場型首長のメリットとして、一般の人にとって県・府・市政を身近にすること、首長への支持が高くなったり、住民や国民の関心が高くなったりして、反対がある改革や長年の懸案事項が進めやすくなることを挙げ、一方デメリットとして、実際は複雑な問題なのに単純化・劇的にして、問題の正しい把握や解決を阻害する恐れがあること、よくテレビなどメディアに登場したり敵を設定するので、いっこうに成果が出なかったり、問題解決の方法を間違っていても「がんばっている・戦っている」というイメージを一般の人々に与える音、過度または感情的に攻撃すると、攻撃される側は単に反感が強くなり対決構図がひどくなったり、または逆に批判を控えることを挙げている。 そして、劇場型首長のデメリットからくる危惧に対する対応策として、「議会改革」によって住民の信頼を得て、劇場型首長に十分対峙できる早急な議会の態勢整備などを指摘している。 近年、注目を集めている特徴的な首長の事例研究としてよくまとまっていて、興味深かった。ただ、本書では、劇場型首長を「本来、政治が人々の利害や価値(思想)の調整をするものであるにもかかわらず、一般の人々にとって分かりやすく劇的にみせる政治手法を用いて、自分の政治目的を実現しようとする首長」と定義しているが、取り上げられている5人の首長をこの定義で一括りに論じ、劇場型首長として一般化するのは、ちょっと無理があるような気もした。個々のキャラクターがかなり独特だからだ。著者の分析は、一番、橋下大阪府知事(当時)にあてはまるような気がする。 劇場型首長に対する対抗策として、議会改革による議会の態勢強化を主張していることには同感だ。劇場型首長に限らず、二元代表制の趣旨にのっとり、議会が首長のチェック機能を適切に果たせるようにすることがどの自治体にも求められていると思う。
Posted by
- 1