原子力 その隠蔽された真実 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
この本を読んで、原子力の歴史を学ぶことができた。タイトルにもあるように、人の手に負えない力をどうやって隠されて進められてきたのか、なぜ安全ではない原子力に依存してきたのかが、克明に記述されている。また、「外的には見えないが、人の体の内部を知らず知らずに傷つける」その放射能の恐ろしさを分かっていながら、なぜ人類は開発をし続けてきたのか、また、原発事故以後、世界はどのように原発と向き合っていくのかを考えさせてくれる。 本書を読んで感じたことは、率直に、原子力とは人間の欲そのものであるということである。自然にないものを作り上げ、試してみたいという科学者の欲、核兵器として実験し、世界の利権を手に入れたいという政治家の欲、電力としてのインフラを独占したいという企業の欲、そこに関わることで金と利益をえたいという原子力ムラの欲。欲の塊が増長しすぎて、爆発し、収拾がつかない事態になってしまった。人間の手には負えないものを、人間の手で管理することはできない。人間は自然の一部である。そのことをわきまえないで、人間が自然以上のものを手にすることはできない。自然の摂理の中で、身の丈にあった生活や文明を維持していくことが、生物としての生き様ではないかと思う。
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福島原発の本当の意味を知り、今後どうすればいいかを考える礎とする本だと思う 前書きから。 事故の理由を問うのは、なぜ地震と津波でこれほど広大にして長期にわたる被害を出すような施設があそこにあったか、その点を問うことと同じである。そこには長い過去がある。我々はこの惨憺たる結果...
福島原発の本当の意味を知り、今後どうすればいいかを考える礎とする本だと思う 前書きから。 事故の理由を問うのは、なぜ地震と津波でこれほど広大にして長期にわたる被害を出すような施設があそこにあったか、その点を問うことと同じである。そこには長い過去がある。我々はこの惨憺たる結果を生むに至った原因を一番最初までさかのぼってみなくてはならない。 話の始まりはヒロシマとナガサキで暮らしていた人びとの上に落とされた原爆である。核エネルギーという新しい技術の開発にかかわった科学者と技術者は、自分たちが作ってしまったものの威力におびえた。戦争が終わった段階で全てを無に帰してしまいたいと思ったものもいた。 しかし、一度作ってしまったものを消滅させることはできない。 そう言う時期に「核エネルギーの平和利用」が提案された。関係者は心の内なる罪悪感を手伝って、その実現に力を貸した。一見したところ悪魔と思えた子が天使を連れてきたと知って喜んだ しかし実際にはこの双子は二枚の仮面をかぶった一つの人格だった。どうやっても切り離せないのだ。天使は実は悪魔だった。そこのところを隠蔽して育ったから、原子力にカンするテクノロジーは秘密の多い、非民主主義的で市場原理にも反する、ひどく不健全な育ち方をした。 自分たちの倫理能力を超える者に手をつけてしまった人間たちの苦悩と敗北のあとを著者とともに辿って欲しい
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