離婚 新装版 の商品レビュー
「奇妙」な形をとる、とらざる得ないパートナーとの関係、あるいは少女たちの保護者として“遊園地”を見るように彼女たちを見護るような生活は、作者も含む登場人物各人の性質、生き方によるもので、それは、わたしには出来ない、と思わせるものだけれども、その性質やそれに従い思い通りに生きたいと...
「奇妙」な形をとる、とらざる得ないパートナーとの関係、あるいは少女たちの保護者として“遊園地”を見るように彼女たちを見護るような生活は、作者も含む登場人物各人の性質、生き方によるもので、それは、わたしには出来ない、と思わせるものだけれども、その性質やそれに従い思い通りに生きたいという思いはわたしのなかにもたしかにある、とも思えるものでもあって。自らの性質に翻弄されているようにもみえる作者や登場人物たちの生き方には、実は芯や核のようなものがあるようにも思えた。その核も覚悟もないわたしには、彼らのような生き方はやはり“出来ない”と思う。その思いには羨望や少しの嫉妬も含んでいる。だから出来ない者のわたしは小説を読み、いっときそんな生き方、生活に思いを馳せる、のかも知れない。 丁寧で落ち着いた語り口は、言い回しや単語に時代を感じるけれど、同時に現代の小説に感じるよりも自然なキャッチーさのようなものを感じていて、小説、文章自体の読み心地もとても良かった。この作家はやはり好きだな、と思った。
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色川武大文学忌、雀聖忌。伝説の打ち手の作家。 色川武大といえば、阿佐田哲也での「麻雀放浪記」だけど。「麻雀放浪記」といえば、真田広之がキュートだったけど。 第79回直木賞本名での「離婚」 阿佐田哲也的、痴人の愛。 私小説かなと思っていたけど、そうではないらしい。 深刻ぶるのはよそ...
色川武大文学忌、雀聖忌。伝説の打ち手の作家。 色川武大といえば、阿佐田哲也での「麻雀放浪記」だけど。「麻雀放浪記」といえば、真田広之がキュートだったけど。 第79回直木賞本名での「離婚」 阿佐田哲也的、痴人の愛。 私小説かなと思っていたけど、そうではないらしい。 深刻ぶるのはよそうぜ、と離婚した元夫婦の切れない不可思議な縁。 流れに逆らうでもなく、厭世的でもなく、かといって順応するでもない自然体の男。 どうしても本人っぽいけど、妻の実体はないらしい。
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エッセイのうらおもて人生録のタッチとは別に、男女の距離感や心理変化の描写に惹き込まれ、とても面白かった。 時代も感じさせられた。
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「お妾にしてくんない」と転がり込んできたすみ子と、なんとなく同棲生活をはじめ、なんとなく結婚し、なんとなく離婚する。 その後も、すみ子と誠一の奇妙な同居生活は続いていく。 生活力もなく完全にめんどくさくて駄目人間なすみ子を放っておけない誠一の視線が、分かるような分からないよ...
「お妾にしてくんない」と転がり込んできたすみ子と、なんとなく同棲生活をはじめ、なんとなく結婚し、なんとなく離婚する。 その後も、すみ子と誠一の奇妙な同居生活は続いていく。 生活力もなく完全にめんどくさくて駄目人間なすみ子を放っておけない誠一の視線が、分かるような分からないような。 経済的に自立することと精神的に自立することと、結婚の意味を考えてみたりする。 現代だったら、すみ子はどう生きるだろう。 「妻の嫁入り」のすみ子がかわいい。 どこまでもキュートで自由奔放。 〝いいさ、いつまでも居ろよ〟 白黒つけない。つけられない。そうやっていられるのはやっぱり根底に惹かれ合う気持ちがあるからじゃないのかな。 あと「少女たち」を最後に持ってくる構成すごい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
白黒はっきりつけられない、何とも名前のつけようのない間柄の男女が描かれている。(これは誠一・すみ子だけでなくベティとの関係においてもそうだと思う) 誠一・すみ子それぞれにイライラさせられるものの、どちらもなかなか精神的に成長しない部分に人間味を感じて親近感を抱いてしまった。 お互いに、自身のみっともないところをさらけ出しきっている関係は居心地のいいものなのだろう。
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日常で感じる些細な感情は言葉にしないし、できないと思うのですが、それが表現されているような気がしました。 結婚が絵本のようなものじゃなくてもっとリアルなもの、そんなに白黒つけられない感情で成り立っていることを感じました。
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私自身が絶賛離活中なので、そのものずばりのタイトルのこの直木賞受賞作を手に取りました。 でも、結論から言うと、これは子どものいない都会の男女の離婚劇(または結婚劇)ですよね。 それ自体を否定するわけではないけど、10歳の子がいる私にとって参考になるものではなく、ただ都会的自由を謳...
私自身が絶賛離活中なので、そのものずばりのタイトルのこの直木賞受賞作を手に取りました。 でも、結論から言うと、これは子どものいない都会の男女の離婚劇(または結婚劇)ですよね。 それ自体を否定するわけではないけど、10歳の子がいる私にとって参考になるものではなく、ただ都会的自由を謳歌するトレンディドラマのようだなと思いながら読みました。
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離婚という形を取っているものの、 別れてからもお互い行き来をしていて結婚していた頃よりも お互いに気を遣い合っているという不思議な男女の関係です。 元妻は女性という性別でいけば女らしい生きものかもしれないですが、 結婚という形をとるには相応しくなかった相手なのかもしれないです。 ...
離婚という形を取っているものの、 別れてからもお互い行き来をしていて結婚していた頃よりも お互いに気を遣い合っているという不思議な男女の関係です。 元妻は女性という性別でいけば女らしい生きものかもしれないですが、 結婚という形をとるには相応しくなかった相手なのかもしれないです。 この男性もまた他の女性を好きになりながらも、 それ程欲を出すことがなく、 女性だけでなく人生全体に対して無難に ゆるく生きているような感じがして 良いのか悪いのか分からない雰囲気でした。 けれど遊園地という自分の理想郷のようなものが 身近にあったりして危うい気配もあったりしたので それ程女性には苦労しないタイプなので こんなにぼんやりとしているのかとも思えました。 このぼんやりとした感覚をもしかしたら楽しんでるのかもしれないです。 こうなると結婚という形は今も法律上だけの問題という考え方もあり、 どんな形であっても一緒にいて心地良い人であれば問題ないのかと思えました。 この作品は昭和50年代なので、 この時代に現代のような考え方が生まれるというのは先を 読んでいたのかと思えてしまいました。 離婚ということよりもむしろその先の生き方をどうするかということも テーマであった気がします。
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あまりに乱暴にかいつまんてしまうと、フラフラした女とフラフラした男が、ただ一緒にいる話。ふたりして世間から浮遊してる中、ただ一緒にいる、ということがスゴイ。愛情でなくても情で男女はつながる。
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