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深読みミュージカル の商品レビュー

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2023/06/20

 英文学とカルチュラル・スタディーズを専門とする著者による、ミュージカル十作品の解説本。いや、「解説」というと、「作者が伝えたかったこと」や「この作品の意味」はこうです、と「唯一の正しい見方」を教えているかのようで、この本の紹介として正しくないかもしれない。この本は「深読み」とい...

 英文学とカルチュラル・スタディーズを専門とする著者による、ミュージカル十作品の解説本。いや、「解説」というと、「作者が伝えたかったこと」や「この作品の意味」はこうです、と「唯一の正しい見方」を教えているかのようで、この本の紹介として正しくないかもしれない。この本は「深読み」というタイトルの通り、「場合によってはこういう読み方もできる」というひとつの見方を提示している。  とりあえずお手軽にWikipediaのカルチュラル・スタディーズの項を読むと、著者がどういう立場で人気ミュージカル作品たちを読み解こうとしたのかを補助的に理解することができる。正しくないかもしれないが私なりにまとめると、 ・資本主義とか、男性中心主義とか、西洋中心主義とか、新自由主義とか、他にもあるかもしれないが、そんなような既存の支配的な思想に対する批判精神がベースにある ・文化、芸術が好きで、しかもただの娯楽以上の力があると信じている ・読み手、受け手、消費者、観客側を単なる受容者とは考えず、どう読むかも意味の生産行為だ、と考える というような立ち位置からの本だと思う。  つまり小難しく批判的なところもあるので、「私はこの作品やこの楽曲がただただ好きで楽しんでいるのに、やれ家族神話の押し付けだとか、やれ家父長制を肯定しているだとか、水を差すな!」という気持ちになる人がいても、無理はない。第一章「サウンド・オブ・ミュージック」や第二章「ライオン・キング」は特にそうかもしれない。でも、水を差されて冷静になってみると、「確かに当たり前のように、マリアは良い継母になれる、スカーは悪者だ、と受け入れていたけれど、私にそれを受け入れさせているものはなんだろう?」と紐解いていくような読書体験は、なかなか刺激的だ。第三章「メアリー・ポピンズ」までを含む「家族」をテーマとした第一部が、「えっ、そんな読み方もあるのか!」という衝撃度が最も高かったと私は感じた。(ちなみにディズニー映画のメリー・ポピンズについては野口祐子『メアリー・ポピンズのイギリス』もとても面白いです。)  私がこの本好きだなと思うのは、学者さんがこうして、やや説教めいて小難しい読みを示してくるという側面がなくはないながらも、全体を通して、この著者さんもミュージカル大好きなんだなあということが感じられるところだ。研究対象として適切だから題材として選んだ、とかではなく、まずとにかく好きから始まっている感が滲み出ており、ミュージカルファンとしてそこは安心・信頼して読める。だからこそ、ミュージカルを含む文学や芸術というものの複雑さ、豊かさ、つまりこんなに楽しいのにこんなに多くの鋭い問題提起を社会に対して提示することもできるということを、改めて感じられたところも、読んで良かったと思える点だ。  その他備忘。 ・シェイクスピアはすごいんだな。なんでもかんでもシェイクスピアが既に書いている。いつかちゃんと触れたい。 ・演劇理論の用語「異化効果」を初めて知った。ブレヒトという人が言ったらしい。観客を、舞台上の出来事に感情的に同化させ埋没させてしまうのではなく、敢えて「これは演劇である、フィクションである」ことを意識させることで、知的な理解や批判を促す手法。 ※本書はahddamsさんのレビューで(相当前に)知りました。そしてなおなおさんともミュージカル談義で盛り上がった思い出があります♪きっかけありがとうございます。

Posted byブクログ

2022/12/08

レミゼの章で書かれている、一幕ラストの合唱の話はDo You Hear The People Sing?じゃなくてOne Day Moreだと思う。何でそんな間違いが起こってるんだ

Posted byブクログ