日本原発小説集 の商品レビュー
ボクは、原発推進派ではありませんが、 原発のある県で生まれ育った人間として、 今の脱原発論議には、違和感を持っています。 もちろん、今回の大震災をきっかけに、 原発問題に関心を持ったということは、 とても大切なことだと思います。 しかし、今の脱原発論議は、あまりにも感情的で短...
ボクは、原発推進派ではありませんが、 原発のある県で生まれ育った人間として、 今の脱原発論議には、違和感を持っています。 もちろん、今回の大震災をきっかけに、 原発問題に関心を持ったということは、 とても大切なことだと思います。 しかし、今の脱原発論議は、あまりにも感情的で短絡的です。 京都議定書はどうなったの? CO2削減はどうなったの? 原発と共に生きる地元の人々の生活のことを考えているの? 今、足りない電力はどうするの? 日本の景気回復はどうするの? 某有名人やデモもしかりですが、本屋の平台に積まれた 脱原発関連の本を見る度に、何を今更感がふつふつと。 ジャーナリズムと言いつつ、単に便乗しているだけじゃないかと。 それに近いことが、本書の最後でも、脱原発派の文芸評論家によって、 国民総意のような立場で、「解説」の中で原発文学を歪曲しており、 勝手に代弁するなという気持ちでしたが、それが‘今’なのでしょう。 しかし、本書の本編は、今の脱原発論議とは一線を画しています。 執筆当時は、誰の目にも止まらなかったであろう 原発を題材とした小説(短編、中編)を拾い集め、 小説集としてまとめています。 各小説が書かれた時代は、一編を除いてバブル以前のもの。 原発に対する賛否両論それぞれを題材としており、 時代背景も古めかしく、批評的にはB級評価かもしれませんが、 ビックリするほど辛辣で、今なら大変な物議となりそうな内容も…。 しかし、四半世紀を経て、 時代は、ようやくこれらの小説に追いついたのかもしれません。 来年には、 原発問題を題材とした小説も、たくさん刊行されることでしょうが、 本書に掲載された小説以上の小説は、なかなか出てこないでしょう。 巷にあふれている脱原発本などよりは、本書の方をオススメですね。
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