一分ノ一(下) の商品レビュー
奇想天外天衣無縫な文章力とはこの著者の力を表すのにほめ過ぎではないと思う。それくらい面白いお話だ。全部読みたかったなあ。未完なのが残念!
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結局,トウキョウが物語の舞台か~村上薫氏の小説「一分ノ一」は言語障害を持つ青年が新しい国語辞典を作ろうとする男の助手になる話だった。授賞式に臨むサブーシャは西洋式甲冑を身につけ,賞金を日本統一運動のために寄付する・地下活動家を紹介されたいと訴え,トウキョウ・タイムスの池山記者が名...
結局,トウキョウが物語の舞台か~村上薫氏の小説「一分ノ一」は言語障害を持つ青年が新しい国語辞典を作ろうとする男の助手になる話だった。授賞式に臨むサブーシャは西洋式甲冑を身につけ,賞金を日本統一運動のために寄付する・地下活動家を紹介されたいと訴え,トウキョウ・タイムスの池山記者が名乗りを挙げると,サブーシャは狙撃される。副賞として与えられた大学病院の病室に入り,取れなくなった面貌を外そうとして,内視鏡検査を施すのは東勝。大腸内の小型爆弾を点火されよう時に,15時間前に別れた主将犬がサブーシャを救う。クーリエ・サービスに戻り,霊界ランドという商業施設でオープン前のアトラクションに誘われ,前世を知りたいと願うサブーシャは追いつめられた吉良上野介となり,追い込んだ大内の正体を脱いだ東勝から逃れるため,隙を見つけて抜け穴を伝って外へ出る。長制菜館の前を通ると,皿洗いチャンピオンとの勝負が開始され,やけっぱちで投げ上げた皿は主将犬が綺麗に舐めとり,29対27で勝利するだけでなく,東勝の発射した弾丸がベベヌートの洗った皿を割っていた。勝利インタビューで,分断ニッポンを批判すると,T59が出動,対日理事会が絡んでいるのは間違いない。地下通路から地下運河に出ると,本物の村上薫に会ったのも束の間,有料トイレに追い詰められた二人に手榴弾が放たれるが,キャッチアンドタッチに燃える主将犬は相手を粉砕して果てた。行く場所として劇場しかなかったサブーシャは東勝に追い詰められ,コマキーナの機転で逃げ出せそうな所を薬を仕込んだ糸に絡め取られ,法廷に引きずり出され,弁護士の田沼富七は水道を調べてメダゼパムを検出していたのなら抗弁のしようがないという。果たして判決は死刑,独房にいると東勝が面会に訪れ,君は英雄に違いなく,殺すに忍びないと毎晩の説得を繰り返し,最後に転向声明に署名しろと言う。サブーシャの時間感覚では1日も経っていないのを怪しみ,睡眠薬と時計の細工を見破るが,エレベーターと宿酔いの裸の歯科医による拷問に耐えきれず,TVで転向発表を行う羽目に陥る。しかし,TV局にも遠藤三郎のシンパが存在し,生番組放送中につり上げられキャットウォークからスタジオ外に出て,対日理事会ビルの最上階の犯罪心理研究所に新たに招かれた,元人相見の短大講師に化けて脱出の機会を窺えと云われる。人相見のメモから所長以下の弱みを握って牛耳ることはできたが,事務局長の石坂は容易ではない。東勝も現れ,石坂とは間宮一族の従兄弟同士であり,離ればなれになった,もう一人の従弟・音五郎を捜していると分かったサブーシャはその人物の身分証明書を持っているのを示し,新橋の点字地図図書館で会う約束があると出任せを語り,脱出に成功する(未完)~辞書作りの話,文学賞の世界,内視鏡検査,マザーコンプレックス,人相見,点字地図・・・と興味が惹かれた事柄を小説に盛り込んでいる。そのせいで,本筋がずれていくのが井上ワールドだな
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p.241 「わたしたちは勇気に欠けています。情けないほど憶病なんです。苦労して手に入れた地位や財産を手放すのが怖いんです。だから憶病なんです。精神的にどんなに窮屈だろうと、ある程度の衣食住が保証されていれば文句は云うまいと諦めている弱虫なんです。でもそういうわたしたちでも、精神...
p.241 「わたしたちは勇気に欠けています。情けないほど憶病なんです。苦労して手に入れた地位や財産を手放すのが怖いんです。だから憶病なんです。精神的にどんなに窮屈だろうと、ある程度の衣食住が保証されていれば文句は云うまいと諦めている弱虫なんです。でもそういうわたしたちでも、精神的なことについてふっと思いを至すときがあります。あなたのような方を知ると、たとえわずかなあいだでも、祖国とはなにか、自由とはなにかといったようなことがらへ心が向いていきます。これはとても貴いことだと思います。あなたはわたしたちの心の導き手ですわ」
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ますます 面白くなっていく ますます のめり込んでいく 残りのページが少なくなっていくのが 惜しくて 惜しくて でも 永遠に 残り(未完)続ける作品に なってしまった 改めて 井上ひさしさんは 文豪だったなぁ と 心から 悼んでしまいます
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