英語史で解きほぐす英語の誤解 の商品レビュー
★館長の本棚★ 友次副図書館長推薦図書 【所在・貸出状況を見る】 https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/243195
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ぼくは日本語史を知った上で日本語を使っているが、同じように英語を使う上で英語史を知っておくのは意味があると思ったのだった。語学はある程度以降はひたすら量と記憶なので大変だが、学習者の気分転換にも良さそう
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英語は現在コミュニケーションの道具として注目されているが、著者の狙いは、英語がなにゆえ世界語になってきたかを理解することで、英語学習に対する興味、動機を強めることにある。著者はそれを10の誤解を解く方法で、一つ一つ解説していく。謎解きの形式ではあるが、英語史をやさしく解説したもの...
英語は現在コミュニケーションの道具として注目されているが、著者の狙いは、英語がなにゆえ世界語になってきたかを理解することで、英語学習に対する興味、動機を強めることにある。著者はそれを10の誤解を解く方法で、一つ一つ解説していく。謎解きの形式ではあるが、英語史をやさしく解説したものと言える。200頁ほどのコンパクトな本であるが、中身は濃く、本書を読むことで英語がいかにして形成され、世界語としての資格を持つようになったかの歴史を知ることができる。ただ、著者は、英語が世界語になった原因はもちろんイギリスやアメリカの経済、政治、軍事力等によるのであり、言語としての簡素化はとってつけと言うけれど、独仏のように二人称に二つの形を持たないとか、語尾変化が消えてしまったなど、学習に楽になったことは否定しようがない。もちろん、語尾変化がなくなったかわりに、完了形が高度に発達したことは、逆に英語を難しくはさせているが。 英語になぜ句動詞や類義語が多いのか、climb knight psychologyの黙字の存在や母音の様々な読み方など、つづりと発音の乖離がなぜ生じたのか等々、ぼくは細かな記述に興味をもった。アメリカ英語はイギリス英語と違って語尾のrを読むと言われるが、それはもともとイギリス英語の地域差としてあったもので、移民の出身地により、アメリカでもrを入れるところといれないところがあるという話はとても興味深い。
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「英語はラテン語から派生した」とか、「英語は易しい言語である」といったありがちな誤解を、英語史の視点から解説するもの。英語史の通史を扱ったもの、というよりはテーマごとに色々つまみ食いした、という構成にはなっているが、それでも充実した内容になっていて、英語史の主要なトピックについ...
「英語はラテン語から派生した」とか、「英語は易しい言語である」といったありがちな誤解を、英語史の視点から解説するもの。英語史の通史を扱ったもの、というよりはテーマごとに色々つまみ食いした、という構成にはなっているが、それでも充実した内容になっていて、英語史の主要なトピックについては勉強できるし、おさらいもできる内容になっている。 EnglandがAngle+landというのは知っていても、確かになんでアングル人以外にサクソン人とジュート人がいるのにアングル人が代表なんだろう、という疑問は思わなかった。と言っても「3部族内の政治的な力関係によるところが大きいようである。」(pp.68-9)という説明しかないけど。そして特に古ノルド語の影響が「特異」(p.70)というのも、よく分かった。北欧語の伝統として-sonが「~の息子」というのは知っていたが、では本来の英語の接尾辞は「-ing」というのは知らなかった。また、「句動詞の発展も、古ノルド語の影響があるとされる。」(p.71)というのも、押さえておきたい。ノルマン征服のところで、「ノルマンディを治めていたウィリアムとその一族は、数世紀前にブリテン島を襲ったのと同類のヴァイキングの末裔」(p.72)というのは知らなかった。2度にわたってヴァイキングに攻められたことになる、というのは、おれにとっては新しい視点だった。あと、stress-timed rhythmの言語は語尾の発音が疎かになるから屈折がなくなった、というイェスペルセンが「漂流(drift)」と呼ぶ現象について、「なぜ漂流が古英語後期という時期に起こったのか」という問いは面白い。古英語後期に起こったことというのがヴァイキングの侵攻、古ノルド語との接触、という事実から、「語幹はほぼ同じであるのに語尾が異なると言う状況に接した両言語話者は、誤解の元凶である屈折をあえて用いないようにすることで問題を回避したのではないか」(p.97)という仮説が、読んでいて楽しかった。他にも、綴りと発音の1対1関係が崩れた原因6つがまとめられていたり(p.110)、ラウス(「理性」に基づく規範文法)v.s.スウィフト(「慣用」に基づく規範文法)から、プリーストリー、マレーといった規範文法の歴史がまとめてあったり(pp.130-7)、アメリカ英語がrhoticで、イギリス英語がnon-rhoticという既成概念を崩したりしている。。nglishes絡みの現代英語の部分は、ややくどい印象を受けたが、英語学・英語史の入門、基礎の確認としてはとても面白いと思う。(15/11/23)
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