ハドリアヌス の商品レビュー
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《謎に満ちた皇帝の生涯》 古代ローマ史のなかで最も謎めいた人物、皇帝ハドリアヌス。いわゆる「ローマ五賢帝」の三人目として、またユルスナールの歴史小説『ハドリアヌス帝の回想』で知られ、近年では人気マンガ『テルマエ・ロマエ』に建築好きな皇帝として登場する。ローマ帝国に繁栄と安定をもたらした善帝でありながら、彼はしかし同時代の厳しい批判を浴び、その業績は長らく過小評価されてきた。 その原因はひとつには、自伝などの文献が散逸し、史料が少ないこと、そして歴史家モムゼンに嫌われる原因となった、複雑で難しい性格にあった。彼は、合理的な判断をし自制心に富むかと思えば子どもっぽく、気さくで社交的なのに孤独の影がつきまとい、才能ある友人に恵まれ人材を抜擢した反面、身近な人々を簡単に更迭して悔いる様子がなかった。 即位にまつわる疑惑。優秀な軍人でありながら、先帝が征服した東方の属州を放棄したこと。元老院との友好的な関係を築けなかった理由。そして、当時の上流階級の慣習に反して髭をたくわえ、それが新流行となったこと......。『キケロ--もうひとつのローマ史』の著者が、ハドリアヌスをめぐる数々の謎について考察しつつ、その人生を時代背景ごと活写する一冊。
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ハドリアヌスについて考える好著。叙述なめらか。資料を整理したうえで、きちんと自分の見解を述べているところも好感。訳文もよく、原注も文献案内もしっかり掲載。紙質すこぶる良好。ページを繰るのが愉しい本。いい音します(江國香織『ぼくの小鳥ちゃん』の小鳥ちゃんもきっとご満悦)。 という...
ハドリアヌスについて考える好著。叙述なめらか。資料を整理したうえで、きちんと自分の見解を述べているところも好感。訳文もよく、原注も文献案内もしっかり掲載。紙質すこぶる良好。ページを繰るのが愉しい本。いい音します(江國香織『ぼくの小鳥ちゃん』の小鳥ちゃんもきっとご満悦)。 というわけで、価格に難あり。世にいう高杉…。 (それと学者の解説が、全体のリズム感を崩している…) それでもハドやんについてもっと知りたいという人は、ぜひ!
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