科学研究者の事件と倫理 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
詳しい。 研究倫理の問題とその他の問題(研究費やハラスメント等)の問題を明確に分けていたことは評価できる。若干弱いものの、過去の不正事案にも触れている。 他の新書等よりも扱う内容が網羅的である印象を受けた。
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まさかの2011年に著された本。STAP事件がおこる前から十数年間も研究不正倫理を研究してこられただけあって、内容が充実していた。この本を読んで。理l化学研究所の規定と文部科学賞のガイドラインが一致している事も分かったし、その内容が実に曖昧であるということも認識させられた。多くの...
まさかの2011年に著された本。STAP事件がおこる前から十数年間も研究不正倫理を研究してこられただけあって、内容が充実していた。この本を読んで。理l化学研究所の規定と文部科学賞のガイドラインが一致している事も分かったし、その内容が実に曖昧であるということも認識させられた。多くの研究不正事例を挙げ、今後どうすればよいかも提言している。文科省、大学、研究コミュニティなどに関わる人たちに読んでもらいたい一冊。
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明治から平成までの136年間に、研究者が引き起こした犯罪をデータベース化し、分析したもの。 筆者は元々はバイオ分野の研究者であり、「研究者の事件」を研究する目的は: ・科学技術に関連する事件や研究者が起こす事件の責任の第一は科学者にあると考え、その意識と役割を増強したいため ・...
明治から平成までの136年間に、研究者が引き起こした犯罪をデータベース化し、分析したもの。 筆者は元々はバイオ分野の研究者であり、「研究者の事件」を研究する目的は: ・科学技術に関連する事件や研究者が起こす事件の責任の第一は科学者にあると考え、その意識と役割を増強したいため ・研究者が被害者にならないため ・科学研究の信頼を高める、あるいは高いままに維持するため としている。 本書の想定している読者も、まずは研究当事者である。 そういう意味では、はるか昔に研究畑に数年いたのみでそこを離れて久しい自分は対象外なのだと思うのだが、なかなか興味深く読んだ。 データベース化の元になっているのは、主に新聞記事のデータベースである。これをキーワード検索して研究者の事件と言えそうなものを抽出していき、分析している。 事件の性質から、各論として「盗用」「ねつ造・改ざん」「研究費不正」「セクハラ・アカハラ」等に分け、考察している。最後にこうした事件がなぜ起こるか、どうしたら防げるかを筆者の提案とともにまとめている。 筆者は研究者の立場から同業者への注意という意味で書いているわけだが、一般も知っていてもよいのでは、と思われる点もいくつかある。 特に、「盗用」「ねつ造・改ざん」の章は、示唆に富んでいると思う。 データを解釈する際に、悪意がなくても自分で立てた理論に沿うものをピックアップしたり、自分の解釈に沿った面から見たりすることは、ありがちなことだ。世界は白と黒だけではない。 「研究費不正」に関しては、研究費の使われ方の実態と制度の解離が根底にあるという。何だか、高速道路で制限速度を守っていると逆に邪魔にされたり、また、予算を使い切るために年度末に道路工事が増えるという話を思い出した。 「アカハラ・セクハラ」については、マスコミの「煽り」が看過できないとのこと。研究者社会が独特で閉鎖的な面があるのも問題ではあるのだろうが、実体に合わない大きな扱いで不正の大きさ以上に処罰が大きくなってしまうこともある。 総じて、研究者社会と一般社会の相互に風通しをよくする努力が必要であるように思われる。 「ねつ造・改ざん」が度を超えれば、誤った結論から社会が不利益を受けることもあるわけだし、「研究費」の「不正」な使用が、野放図であれば、税金を無駄遣いすることになる。しかし、いずれもあまりに締め付ければ、科学の発展の妨げとなりうる。 一般社会も科学研究にもう少し関心を持ち、研究者社会も一般の科学リテラシーを高めるべく努力していくという姿勢が大切なように思われた。 この本(というかこの研究)の第一のポイントは、まずは「研究者の事件」がどのように起こっているのか、基礎データを集めたところだろう。対策を講じるにしても、分析が的外れでは有効な手は打てない。まずはそこから、というのは大切な指摘だと思う。 ただ、筆者が「バイオ政治学」と呼ぶこの分野自体、研究している人は日本では多くないようで、研究手法を含め、複数の視点が必要な分野なのではないかと思う。
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