和本入門 の商品レビュー
相当面白い。しかも読みやすい。 大学時代にやった、中世の書誌学は、あれは入門すらしていなかったんだ。もっとつっこめば面白かったのかなぁ、って30年近く前のハナシでした…
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・橋口侯之介「和本入門 千年生きる書物の世界」(平凡社ライブラリー)は神田の和本専門古書店主の書いた実践的入門書である。おもしろい。書誌学のテキスト等でもそれなりに実践的なのだが、これは質が違ふ。さすが古本屋の主人である。学者には出せないものが出てゐる。これは解説にもあることだが...
・橋口侯之介「和本入門 千年生きる書物の世界」(平凡社ライブラリー)は神田の和本専門古書店主の書いた実践的入門書である。おもしろい。書誌学のテキスト等でもそれなりに実践的なのだが、これは質が違ふ。さすが古本屋の主人である。学者には出せないものが出てゐる。これは解説にもあることだが、驚いたのは和本といふ用語である。これは普通に使ふ。古本屋では当然のこととして、お宅、和本、置いてないの、などと使ふ。図書館でも和本で通じる。だから用語として確立したものと思つてゐたのだが、どうもさうではないらしい。古典籍、和古書、国書等の類似の用語もある。しかし、これらには何かと不都合があるらしい。そこで橋口氏は、「有史以来、明治の初め頃までに日本で書かれたか、印刷された書物の総称」(19頁)として和本なる用語を使ふ。この語は江戸時代の本屋の用語であつた。唐本に対する和本である。かなり大雑把な用語であるが、「書物というのは幅広いものなので、あまり狭く考えずに『和本』のようにゆるやかに包容することばで語るほうがいいと」(22頁)いふわけである。 ・本書ではこのやうな和本を全4章で説明してゐる。第一章、和本とは何か、これには「その歴史と様式を知る」といふ副題がついてゐる。初級である。書誌的事項の解説はもちろん、五山版や古活字版の説明もある。これらは書物の歴史には欠くことのできないものである。第二章、実習・和本の基礎知識、これは「本作りの作法を知る」といふ中級編である。ここでは最初に和本調べるための情報といふことで、基本情報、位置情報、個別情報の説明がある(104~105頁)。確かに和本にはこれだけの情報がある。書名、著者名、成立年等が基本情報、ごく簡単に言つてしまへば、第何刷り、あるいは第何版かといふのが位置情報、保存状態、書き込みの有無等が個別情報である。和本には書き込みが多い。図書館等にある書でも膨大な書き込みを持つものがある。いや、和本では書き入れといふ。その「多くは有益な注釈が入っている。」(206頁)からである。和本は書き入れされることを前提として作られてゐる(207頁)らしい。これは知らなかつた。「誰の手になるものかわかればたいへんよい。(中略)同じ版本の書き入れのない本とは、たとえ本文が同一であっても、もう別の本といえる。」(207頁)当然、古書価に反映する。「もしよい書き入れなら価値を高める。」(230頁)のである。のみならず、「有力な学者や僧がかつてそうして書き入れた本をもとに、後世新たに注釈入りの本を作った」(207頁)といふ。現代ならば著作権の問題が起きさうであるが、和本時代は決してさうではなかった。この代表に「古言梯」がある。手元にあるのは元本である。これがそんな書き入れによつて最後は「古言梯標注」になるといふ。かういふのも、必要なくて安いものを適当に買ふ人間には分からないことである。こんな個別情報は古本屋にも重要である。「和本の貌を見るプロの見かた」(213頁)といふのもあり、ここでは和本を売買する人間の見方が示されてゐる。これは買ふだけの人間にも役に立つ。確認すべき事項は何か。入り本、補写、虫損、題箋、冊数、巻数、更には奥付、帙等々、これらは確かに確認しないとまづい。虫損などはひどいと読めない。それでも安いから買ふといふ手もあるが… …傷みも同様である。私はさういふ本も買つた。安いからである。地方だとそんなものしかないこともある。それでも和本である。このやうに本書は実践的である。おもしろく和本を知ることができる。さすが神田の古本屋、和本のプロである。
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ありがたや、平凡社ライブラリー入り大歓迎。 「続和本入門―江戸の本屋と本づくり」も平凡社ライブラリー入り予定とのこと、絶対に買います。平凡社万歳。(だったら単行本で買えよって言われそうだけど・・・。ごめんなさい) 読了 表記、定義が非常に細かいのに驚愕。それだけ豊かな文化の幸なの...
ありがたや、平凡社ライブラリー入り大歓迎。 「続和本入門―江戸の本屋と本づくり」も平凡社ライブラリー入り予定とのこと、絶対に買います。平凡社万歳。(だったら単行本で買えよって言われそうだけど・・・。ごめんなさい) 読了 表記、定義が非常に細かいのに驚愕。それだけ豊かな文化の幸なのだと。時にユーモラスな筆致で魅力と歴史を説き明かす。 愛好者、読者、収集者一人一人が文化の継承者なのだと。和本を一冊だけ持っている僕ですが、それを含め本を雑な扱いしている。所有者に僕は相応しくないけど、著者が進めるように町の図書館である古書店で和本に触れてみようかな、と想う。
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