貧困ビジネス被害の実態と法的対応策 の商品レビュー
日本弁護士連合会貧困問題対策本部『貧困ビジネス被害の実態と法的対応策』(民事法研究会、2011年)は、貧困ビジネスの実態と救済に向けた法的対策を解説した書籍である。貧困ビジネスとは「生活困窮者や住居喪失者、低賃金労働者、多重債務者など、社会的弱者である貧困層の弱みや知識不足を利用...
日本弁護士連合会貧困問題対策本部『貧困ビジネス被害の実態と法的対応策』(民事法研究会、2011年)は、貧困ビジネスの実態と救済に向けた法的対策を解説した書籍である。貧困ビジネスとは「生活困窮者や住居喪失者、低賃金労働者、多重債務者など、社会的弱者である貧困層の弱みや知識不足を利用して利益を得る事業」である(杉村栄一・福祉保健局長、東京都議会、2010年12月8日)。 テン年代が始まる前後に貧困ビジネスは大きな社会問題になった。敷金・礼金ゼロを謳いながら高額な違約金を取るゼロゼロ物件や生活保護をピンはねする「囲い屋」、さらに最近では脱法ハウスが登場している。ゼロゼロ物件は敷金・礼金ゼロで一見すると消費者の味方のような顔をしているが、契約にない料金や違約金を徴収して割高になる。 ゼロゼロ物件は大家にとってもデメリットである。ゼロゼロ物件は仲介不動産業者が手っ取り早く入居者を集めるためのもので、仲介不動産業者の利益にしかならないと指摘される。「アパートや賃貸マンションのオーナーとしては、ゼロゼロ物件を売り物にしているような不動産仲介会社には、近寄らないことが肝要でしょう。」(「ゼロゼロ物件は誰のためのものか?」田村誠邦レッツプラザ2009年1月22日) 貧困ビジネスはテン年代が終わろうとする時期に改めて社会問題になっている。無料低額宿泊所には以下の声がある。「住宅費と朝夕の食費、水光熱費などとして毎月10万円近く徴収され、支給される生活保護費は手元にほとんど残らなかった」(風間直樹「生活困窮者を囲い込む「大規模無低」のカラクリ」東洋経済オンライン2019年3月1日)。定義には「無料」と付いているが、搾取される点ではゼロゼロ物件と同じ欺瞞がある。 ゼロ年代からテン年代にかけて貧困ビジネスは、しぶとく残っている。名前を変えて営業する業者も存在する。継続的な貧困ビジネス批判が大切である。住まいは人権との意識を確立し、住まいの貧困問題を解決することが日本社会の大きな課題である。
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