日本経済の底力 の商品レビュー
東日本大震災によって甚大な被害を受けた日本であるが、筆者は「復興」だけではダメであり、復興を越えた「飛躍的成長」が必要であるとする。 なぜなら震災前の日本経済は停滞しており、復興しても長期的には凋落していくだけだからである。 そこで震災後の今こそ、日本経済の飛躍的成長のために手...
東日本大震災によって甚大な被害を受けた日本であるが、筆者は「復興」だけではダメであり、復興を越えた「飛躍的成長」が必要であるとする。 なぜなら震災前の日本経済は停滞しており、復興しても長期的には凋落していくだけだからである。 そこで震災後の今こそ、日本経済の飛躍的成長のために手を打つべきであると述べている。 その方法として、①TPPへの参入により企業のグローバル化を図ること、②東北など地方に特区を設け、産業集積による発展を図ること、の二つを主張している。 日本には力を持った臥龍企業が多くあり、TPPによって海外とつながり、特区により企業同士や大学などとのネットワークを拡充して、産業集積による技術向上を図ることで、生産性が大きく向上するとしている。 このような主張には賛成である。そしてそのタイミングは今しかないと思う。 筆者も述べているように、明治維新や戦後など、日本は混乱期に制度を大きく変え成長してきた。 今がまさにその混乱期であり、21世紀の日本の発展のために大転換を図るべき時であると思う。
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グローバル化に賛成の内容でありそれもデータに基づいた論述で過去に読んだグローバル化反対のものと比較出来て面白かった。
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グラフを用いた説明等もあり、理論展開が分かりやすい。多用される「文殊の知恵」論には少し疑問に思うところもあったが、経済特区に関する内容には目新しさこそないものの納得させられる。
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明解なロジックで日本の底力を示してくれる。日本は明治維新や第二次世界大戦後に成し遂げたように、復興を超えた飛躍的成長を遂げる必要があると説く。そのためには、制度的転換によって、企業のグローバル化と、地方の産業集積の創出を、図る必要があるとする。ポイントとなるのは人と人とのつながり...
明解なロジックで日本の底力を示してくれる。日本は明治維新や第二次世界大戦後に成し遂げたように、復興を超えた飛躍的成長を遂げる必要があると説く。そのためには、制度的転換によって、企業のグローバル化と、地方の産業集積の創出を、図る必要があるとする。ポイントとなるのは人と人とのつながりであり、若者に期待を寄せている。
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戸堂康之著「日本経済の底力」中公新書(2011) 本書の特徴としては、経済学を中心とした学術的な実証研究の結果をもとにしていることだ。それによって、東北の地震による復興、そしてその復興を超えた成長のために乗り越えなければならない2つのことで議論を展開していることだ。1つがTPP(...
戸堂康之著「日本経済の底力」中公新書(2011) 本書の特徴としては、経済学を中心とした学術的な実証研究の結果をもとにしていることだ。それによって、東北の地震による復興、そしてその復興を超えた成長のために乗り越えなければならない2つのことで議論を展開していることだ。1つがTPP(環太平洋戦略的連携協定)の締結により、日本経済をさらにグローバル化して、外国との貿易、投資、知的交流を活性化させること。つまり筆者はTPPについては、積極的な論者となっている。もう1つが東方をはじめとして日本の各地に特区をつくることで高度な技術を核とする産業集積を創出することである。産業集積が経済成長を促進する上でどの程度の効果があり、どのような方策や政策をおこなえばよいかについて詳細に述べている。 *一般的に、革新的な技術が生まれても、普及するには時間がかかる。例えば、日本にはじめて自動車が輸入されたのは、1989年であり、1904年には国産自動車第一号も作成されたが普及にはなかなか結びつかなかった。しかし、初上陸から25年後の1923年に関東大地震が東京を襲い、復興のための輸送手段として自動車やトラックの有用性が認められたためにようやく普及が進んだ。大災害の作用はシュンペーターのいう「創造的破壊」にも通じる。大災害たもたらす容赦ない破壊から、新しい成長の芽が育つということなのだ。 *輸出から生産性への因果関係を示すデータがある。日本のデータをつかった研究では、輸出をすることで企業の生産性成長率は平均で2%ほど上昇することが見いだされている。海外直接投資をすることでもやはり生産性成長率が平均で2%あがるとの実証結果がある。もしすべての企業の生産性成長率が2%あがれば日本全体のGDP成長率もおおむね2%上昇する。 *しかし、生産効率が向上することよりももっと重要なのは、輸出や直接投資といったグローバルな活動を行うことで、企業が世界とつながり、海外の最先端の技術やアイデア、情報にふれ、技術や経営の確信を行うための知識や手がかりを得ることができることである。 *日本の輸出額の対GDP比は15.6%であり、主要先進国、新興国の中では最低レベルである。つまり、日本は輸出大国でもなければ、外需に依存した国でもない。日本では、日本企業はアジアに投資しているように思われているが、実は対外直接投資の対GDP比で言えば、他の先進国と比べると低い。 * TPPの特徴は何と言ってもその規模である。交渉中の9カ国のGDP総額は、正解の28%である。むろん、これは世界のGDPの24%を占めるアメリカが含まれていることが大きい。さらにもし、日本がこれに参加すれば世界のGDPの三分の一をしめる巨大な自由貿易圏となる。貿易を拡大するにしても、つながりによる技術や情報のやりとりの効果にしても規模が大きい方がメリットもおおい。 *TPPに日本が参加した場合には、日米のGDPで全体の96%を占めることになる。このことからTPPは実質的には日米のEPAであるとの議論がある。また日米間の工業品に対する関税はすでに低いこともあって、TPPは必要ないとの議論もある。しかしTPPに参加する可能性の高いアメリカとマレーシアについて、日本からの輸出をみてみると必ずしもこの議論は正しいとは言えないことがわかる。
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震災からの復興、東北の再興等挙げられているが、どうもTPP擁護というのが透けて見える。タイトルだけでつられて読んでしまった事を後悔。日本の底力という事で歴史的な事実を踏まえた論証もTPPという一時のトピックを大きく扱うことでげんなりしてしまった。
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日本経済は、東日本大震災を機に制度的大転換をすることによってのみ復興を超えて成長することができる。そのためには、グローバル化と産業の集積が必要。 このような、国内外でのつながりを増やす制度を採用し、「三人よれば文殊の知恵」効果を十分に活用して行かなければならない。
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TPPによる開国と日本各地に作る経済特区。 グローバル化を促進するためには政策介入が必要である。 開国しても日本の良さは失われない。フランスがEUに加盟してもフランスの良さは失われなかった。 牛肉を明治時代に日本人が食べるようになって、牛丼を発明し、それが世界に進出している例はわ...
TPPによる開国と日本各地に作る経済特区。 グローバル化を促進するためには政策介入が必要である。 開国しても日本の良さは失われない。フランスがEUに加盟してもフランスの良さは失われなかった。 牛肉を明治時代に日本人が食べるようになって、牛丼を発明し、それが世界に進出している例はわかりやすい。 それ以外は、ありきたりなことしか論じてないから面白くない。肩すかしな本。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
大災害があっても経済はそれ以前のトレンド以上に成長するという例があり、それをして日本経済にもこれを機に成長する余地があるという。しかしこれまでの戦争や地震などのshockはtemporaryなshockだったが、今回の震災は原発の事故も絡んでいてpermanent shockと言えるはずである。また、本の中で指摘されているように、もともと衰退傾向にある産業はshockの影響がやや残ることがわかっており、それらを勘案すると、東北の未来は決して明るいものではないのではないか。 TPPの章でも、日本の農業に比較優位がないとすれば、農業から製造業に労働人口や資本が移動するはずであるが、それに関してもっと突っ込んだ議論が欲しかった。貿易自由化は国全体の利益になることはわかりきったことであるが、一方で農業従事者の既得権益がある程度失われるのは必至で、それをいかに説得するかが問題なのではないか。 しかし、学術誌からの引用も大変多く、貿易や産業集積の実証分析の論文のサーベイとしても読みごたえがある。
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【出会い】 修論副査の先生の近著。 【概要】 震災後の日本でいかに経済復興を果たすかというテーマに対し、「グローバル化」と「産業集積」という観点からその方途を明快かつ平易に解説。 【感想】 「三人寄れば文殊の知恵」効果を高め、「臥龍企業」を躍進させるというメッセージはシンプル...
【出会い】 修論副査の先生の近著。 【概要】 震災後の日本でいかに経済復興を果たすかというテーマに対し、「グローバル化」と「産業集積」という観点からその方途を明快かつ平易に解説。 【感想】 「三人寄れば文殊の知恵」効果を高め、「臥龍企業」を躍進させるというメッセージはシンプル(立場としては賛成)。 論証として既往の研究、数値データ、事例を豊富に引いていて、あまり経済学になじみがない人でも分かりやすい内容になっているように思う。
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