アフガン諜報戦争(上) の商品レビュー
【一九七九年以後のアフガニスタンは、外国人が考え出し無理やり押しつけた政治的・軍事的構想の実験場だった】(文中より引用) ソ連侵攻から9.11までのアフガン情勢をパキスタンやアメリカ、そしてサウジアラビアといった国々の諜報模様と合わせて描き切った作品。複雑に入り組んだそれぞれの...
【一九七九年以後のアフガニスタンは、外国人が考え出し無理やり押しつけた政治的・軍事的構想の実験場だった】(文中より引用) ソ連侵攻から9.11までのアフガン情勢をパキスタンやアメリカ、そしてサウジアラビアといった国々の諜報模様と合わせて描き切った作品。複雑に入り組んだそれぞれの思惑を見事に活写しています。著者は、本作でピュリッツァー賞を受賞したスティーブ・コール。原題は、『Ghost Wars』。 頭が沸騰するんじゃないかというほどに膨大な情報量を詰め込んだ大作にして傑作。書かれている内容はもちろんなんですが、何よりもこの複雑極まりないアフガン情勢をここまで書き切った著者が凄まじい。実質上の続編にあたる『シークレット・ウォーズ』にも手を出してみようと思います。 どうやったらこんな取材ができるんだろう☆5つ ※本レビューは上下巻を通してのものです。
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米国、パキスタン、サウジの各情報機関と、イスラム戦士、タリバン、アルカイダとの攻防を、公文書と証言から緻密に再現し、検証したノンフィクションの白眉。ピュリツァー賞受賞!
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アメリカ、特にCIAのアフガニスタンとの関わりを、 上巻ではソ連のアフガン侵攻からタリバン政権の樹立、 テネットのCIA長官就任まで描く。 非常に登場人物が多く、事態が複雑なこともあり 内容の理解は難しく、骨太極まる一冊だが、 語口そのものは平易で、雰囲気はよく伝わる。 下巻にも...
アメリカ、特にCIAのアフガニスタンとの関わりを、 上巻ではソ連のアフガン侵攻からタリバン政権の樹立、 テネットのCIA長官就任まで描く。 非常に登場人物が多く、事態が複雑なこともあり 内容の理解は難しく、骨太極まる一冊だが、 語口そのものは平易で、雰囲気はよく伝わる。 下巻にも期待したい。
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旧ソビエトが見た地獄としての「アフガン侵攻」、サウジの純粋な大富豪の息子がテロを起こすまでの数奇な運命を描いた「崩壊する巨塔」、と合わせて政治と諜報の歯車が少しづつ911へと繋がって行く本書を読めば、その前夜までの見取り図には十分だと思います
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読み応えがあるのは勿論だが、原注が上下巻分合わせて下巻に載っているのはいただけない。上巻の原注は上巻に載せて欲しかった。減点1。
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9.11のテロの映像は衝撃的でした。 本書の原作はこの9.11テロを受けて書かれたものであり、旧ソ連のアフガニスタン侵攻以前からアフガニスタンの北部同盟のマスード司令官がアルカイダの自爆テロで暗殺されるまでの間、アメリカが如何にアフガニスタンやイスラム世界に向き合ってきたかを解説...
9.11のテロの映像は衝撃的でした。 本書の原作はこの9.11テロを受けて書かれたものであり、旧ソ連のアフガニスタン侵攻以前からアフガニスタンの北部同盟のマスード司令官がアルカイダの自爆テロで暗殺されるまでの間、アメリカが如何にアフガニスタンやイスラム世界に向き合ってきたかを解説しており、2005年にピュリッツァー賞を受賞したノンフィクションです。 邦訳版の本書はそれから6年の時を経て、9.11の10周年を前に上下巻2冊セットで販売開始されました。 上下巻共に分厚く、内容も詳細なものとなっており、本書を読めば、アメリカはアフガニスタンやイスラム世界にどの様に向かい合ってきたか、そしてそのアメリカは相手にどの様に受け止められてきたかに関する、深い視点からの新しい見方が得られるのではないでしょうか。 文量も多いのですが、下巻のほぼ半分は本文の注釈に使われているなど、実質的には1.5冊となっていますし、また何よりも(恐らく少なくとも現時点では)邦書に他に類をみない程、詳細な解説がなされていますので、アメリカのテロとの戦いはどの様に始まったのか、イスラムテロリストの源流は?を日本語文献で知りたいという方には必読の書籍ではないかと思います。 さて、前置きが長くなりましたが、以降、本書の内容について簡単にご紹介したいと思います。 上記しましたが、本書では、旧ソ連のアフガニスタン侵攻以前、イラン革命によりカーター政権下のアメリカがイランから撤退させられた事に始まり、アフガニスタンの有力な反タリバン、反アルカイダ勢力・北部同盟のマスード司令官がアルカイダの自爆攻撃によって暗殺されるまでを取り上げており、それぞれの時代におけるアメリカ、旧ソ連、パキスタン、サウジアラビア、イランなどの国内情勢やそれらの国を取り巻く国際情勢、各国政府内部の動き等が解説されています。 内容は豊富でその全てをここで(簡単なものであっても)到底ご紹介することは出来ませんが、本書が解説するイスラム勢力とアメリカなど資本主義国家との今も尚続く戦いの切っ掛けとその歴史は以下の様な物になるかと思います。 冷戦時代、米ソ両超大国はヨーロッパ方面に注力しており、その為、両国ともイスラム世界の専門家が極めて乏しかった。 その様な中、現場における諜報活動の結果がソ連全体を動かし、ソ連指導部も回避したかったアフガン侵攻に至った。 アメリカはそのソ連のアフガン侵攻に対して、現地のアフガニスタンやイスラム世界に対する理解が乏しいまま、あくまで米ソ対立と言う視点のみに基づく反応を示した。 そして、その結果、アメリカやアメリカから働きかけを受けたサウジアラビア等から膨大な資金等がパキスタンを経由して反ソ連イスラム勢力に流れ込み、ソ連のアフガン撤退後にはそれらのイスラム勢力が反米活動へとシフトしていった。 これを警戒する動きはアメリカ政府内部にもあったが、アメリカ国内のアフガニスタンに対する関心の低さにより適切な対応に結びつかず、また、アフガニスタン国内において有力な対タリバン・アルカイダ勢力となるはずであったマスード率いる北部同盟への適切な援助も行われず。 そして、劣勢に追い込まれた北部同盟は自爆攻撃によってその司令官マスードを失ってしまった。 対タリバン・アルカイダ作戦を実行する際に生じる様々な法律上の問題やクリントンに対する弾劾、歴代政権内部の意見対立、秘密工作の内容暴露と言ったCIAのスキャンダル等、複合的な要因も積み重なり、アメリカは繰り返し、繰り返し、その後の歴史が大きくアメリカ有利に変わったであろうターニングポイントを逃し続けた様子が冷静な文章で綴られており、その客観性によりかえって文章の迫力が増していました。 本書の締めの言葉でもある、マスード訃報に接したハミド・カルザイが発した「なんと不運な国だ」。 この発言が指している不運な国とはアフガニスタンである事は間違いがないでしょうが、本書を読み終えた今、思わず「その国とはアメリカのことではないか」と・・・ 時間に追われたからなのか、正直、本書(初版)の文章の中に翻訳が粗い感じがする箇所やこれはタイプミスなのかと思った箇所などがありましたが、それを考慮しても十分すぎる内容です。 現在を生きる私達にとって、直接間接の違いこそあれ、超大国アメリカの行く末とは無関係ではいられないのが現実です。 そして、そのアメリカが囚われた"アリ地獄"であるイスラムテロ勢力との戦い。 この戦いが始まった原因を知り、今後の見通しを持ちたければ本書は必読です。
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