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文学ラジオ空飛び猫たち第19回紹介本。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/19-elr2dq ミエ ユーモアたっぷりの家族小説です。アメリカの中流家庭が舞台ですが、母親のイーニッドは世間体を気にするあまり、物事を自...
文学ラジオ空飛び猫たち第19回紹介本。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/19-elr2dq ミエ ユーモアたっぷりの家族小説です。アメリカの中流家庭が舞台ですが、母親のイーニッドは世間体を気にするあまり、物事を自分の都合の良い方に飛躍させて考えてしまう癖があって、そんなイーニッドと頑固親父のアルフレッドと三兄妹のやり取りが笑えます。印象的だったのは、エリート街道を歩むと思われた三兄妹が親の期待を裏切るところです。三兄妹は自分らしく生きようとすることで個性が際立っていきますが、そのために親が子に望むこととのギャップが生じます。このギャップをユーモア満載に描写しつつ、登場人物一人ひとりの複雑な内面を描いているジョナサン・フランゼンの筆力がすごいです。長い物語の最後には感情を動かされました。いい意味で、社会に対して適当になれて、適当を許容できる気がしました。 単純に笑えておもしろい小説ですが、長編なので読むには時間がかかります。ちょっと世の中が窮屈に思えたり、家族関係に悩んだりしたときに手にしても気分転換になると思います。 この小説は2019年11月に読みました。ちょうど東京で開催されたヨーロッパ文芸フェスに遊びに行ったときに持参していて、会場にいる作家も関係者も私のような参加者も、ジョナサン・フランゼンが描く人物たちと同じように本当は望まれているほど社会的地位に固執しているわけでなく、むしろ世の中を適当に生きているのではないかと思えてきました。会場で一人そんなことを想像して、不思議と気持ちが軽くなりました。
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