ザ・ペニンシュラ・クエスチョン(上) の商品レビュー
[思惑の交差点で]2002年9月の小泉首相訪朝から第二次核危機の勃発を経て、2005年9月の六者協議における共同声明の発表とその後の交渉の漂流までを主にカバーしたノンフィクション大作。日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、そしてなによりも北朝鮮が半島問題という舞台の上でどのように踊...
[思惑の交差点で]2002年9月の小泉首相訪朝から第二次核危機の勃発を経て、2005年9月の六者協議における共同声明の発表とその後の交渉の漂流までを主にカバーしたノンフィクション大作。日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、そしてなによりも北朝鮮が半島問題という舞台の上でどのように踊り続けたかが、膨大なインタビューを基に再構成されています。著者は、『同盟漂流』や『カウントダウン・メルトダウン』などの優れた作品を世に送り続けている船橋洋一。 今年読んだ本の中で暫定1位の素晴らしさ。錯綜し、絡み合い、ときには衝突する各国の行動や言動を一つひとつ解きほぐし、その背景を構成する思惑や懸念を晒し出していく手腕は圧巻以外の何物でもありません。また、船橋氏がどの国の考え方をすくい取っていく際にも、しっかりとその国の内側から半島問題への姿勢を分析、評価している点がお見事。かといってただ硬い読み物かと言われると決してそうではなく、その瞬間の外交的な大きな画を象徴するかのような出来事をしっかりとエピソード的に随所に挟み込んでおり、ノンフィクションとして抜群に面白い点も見逃せません。 得るものが多すぎてとても簡潔にはまとめきれないのですが、特に印象的だったのは日本の交渉力に反映される日米同盟の力学、韓国の「バランサー」論の淵源とその陥穽、中国の日本に対する半島問題に反響する形での軍備増強の懸念、中国が朝鮮半島に描きたい将来像と描きたくない将来像の比較、そしてロシアの北東アジアにおけるアプローチの仕方といったところでしょうか。分量の多い作品であることは確かですが、ぜひ一読をオススメしたい類稀なる良書です。 〜第二次核危機は、失われた機会のオンパレードだった。〜 参りました☆5つ (注:本レビューは上下巻を通してのものです。)
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