関東大震災の社会史 の商品レビュー
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1923年関東大震災後、罹災者が生活再建していく途上で問題となった救護・救済の面から、政府の対応、地方公共団体その他諸機関の対応について論じたもの。非常に詳細に文献を渉猟し、丁寧に説明している。救護・救援にあたっては、まず、救援物資が必要なところに届く手立てが残されているかが肝要であることがわかる。具体的には、港湾設備の修復・鉄道等交通インフラの回復を最優先するということなのだ。また、罹災者救援の要諦として、①救護場所の確保、②飲食物の供給、③診療・医療用の物資の送付が必要となるとしている。 とりわけ、飲食物や医薬品の準備・供給は被災者の体力回復のみならず、伝染病予防という面にも関わる、瓦礫を早期に除去しなければならないのも、かかる伝染病蔓延の回避という側面があるのだ。この状況は、今回の東日本大震災でも同様であったと思われ、著者もよく似た述懐をしている。その意味で、本書は災害においても、歴史に範を求める意味を明快に示した労作といえよう。
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吉野作造研究の関係で手に取った一冊。吉野は東京帝大へ出講時、さあ、昼食をと、建物の外に出たとき被災、翌日から被災者への復興事業に取り組んだ。 さて、関東大震災の記録は、復興に関する都市計画の領域、そして流言飛語によって朝鮮人と地方出身者の日本人の虐殺事件に関する先行研究は沢山存在する。本書がユニークなのは、行政の「救済、救護の実態」に焦点を当てていることだ。 東京市(当時)や内務省と警視庁といった官庁がどのような救護活動を行ったのか。義損金や恩賜金の使用用途も明らかにする。広報活動にも注視するから、メディアが震災をどう報じたのか、復興計画との関係から詳論している。 丹念に行政資料を歴史学の手法で繙き、震災時の社会を生々しく描く一冊。現在進行形の東日本大震災とどう向き合うのか。ひとつの参考になるのではないかと思う。
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仕事のための読書。当時の公文書を元に関東大震災の事実を追う内容ながら、具体的数字の羅列が続き、たとえば政府の意思決定の流れとか、現場で起きる問題などはよく読み取れないので、一旦積読に戻す。必要に応じてレファレンスする。
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