乳豚ロック の商品レビュー
40を超えてイギリスに語学留学をしたキーンこと均。アフリカ系の大家のいる怪しいドミトリーに住み、語学学校で仲良くなったひと癖どころではない友人とアルバイトをし、女友達とドライブに行くなど、貧乏なりに楽しく過ごす。ある日、ピンク・フロイドの『アニマルズ』のジャケットになった廃発電所...
40を超えてイギリスに語学留学をしたキーンこと均。アフリカ系の大家のいる怪しいドミトリーに住み、語学学校で仲良くなったひと癖どころではない友人とアルバイトをし、女友達とドライブに行くなど、貧乏なりに楽しく過ごす。ある日、ピンク・フロイドの『アニマルズ』のジャケットになった廃発電所を目にして…。 広島というか、関西弁で明らかに日本の小説家の文章で始まるのだが、途中から翻訳だっけ?と錯覚するような独特の文章で、イギリス的な描写が拡がる不思議な作風の表題作。Tシャツを売るエピソードがタイトルにも裏のあらすじにもピックアップはされているが、それはごく一部の話である。 また、フリーターがうまく行かず、パチプロを目指すストーリーは、一転して日本の裏路地風な作風で、パチンコの細かい描写とロック好きの主人公の退廃的な日常を描く。 両作品とも、人のきれいな部分ではなく、汗臭く垢の溜まった部分をちらりと見せすぎない程度に見せてくるし、もう何もかも嫌だということもなく、むしろ意地でも生きてやるという生への執着が感じられる部分が良い。 つくづく小学館文庫のピックアップするエピソードが下手くそなのが残念。実際には純文学と言うにはちょっと泥臭い部分はあるが、個人的には純文学的な印象を受けたし、かといって小難しいところもなく、印象の良い作品であった。ただし、多少読者は選ぶであろう。 余談。 パチンコの小説で「NOFX、ブリンク182、バッド・イリュージョン」というのは、バッド・レリジョンの間違いであるが、おそらく作者が間違うと思えないので、編集のミスであろう。些細なミスであるようで、「ロック」とタイトルに使ったことや、他の部分ではそのロックを小道具に実名で扱ってきたので、それだけで星が減るだけのミスだ。
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