小津安二郎名作映画集10+10(08) の商品レビュー
「お早よう」は1959年のカラー映画作品。今回は「子供たち」の視点がクローズアップされ、モノクロTVが世に出始めた時代の、ささやかな日常が描写されている。 解説にあるとおり、まさにテーマは「コミュニケーション」と、そこで用いられる「言葉」であろう。子供たちのあいだでは互いにオナ...
「お早よう」は1959年のカラー映画作品。今回は「子供たち」の視点がクローズアップされ、モノクロTVが世に出始めた時代の、ささやかな日常が描写されている。 解説にあるとおり、まさにテーマは「コミュニケーション」と、そこで用いられる「言葉」であろう。子供たちのあいだでは互いにオナラを交わす遊びがはやっている(かと思えば、オヤジの放った屁に奥さんが「呼んだ?」と聴き返す)。TVを買って貰えない子供が「無言」のストライキを始める。「大人だって、あいさつとか、余計なことばかり言ってるじゃないか」という子供の批判がメインテーマとなっていて、しかしそういう一見ムダな言葉が、コミュニケーションを作り出しているのだ、という現実がうまく描かれている。 ただしコミュニケーションはよいことばかりではない。近所のおばさんたちの陰口はまったく手に負えない。相変わらず突出して演技のうまい杉村春子演ずるいじわるおばさんなんか、今でもああ、こういうオバサンいるんだよなーという感じだ。 そんな暗部ものぞかせながら、それでも日常の人々の「関係性の世界」は淡々と流れていく。 コメディタッチではあるが、日常世界を描いて傑出した作品。さすが、小津安二郎はおもしろい。
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