敗戦三十三回忌 の商品レビュー
著者は1928年生まれ。日本敗戦から33年後の1977年、第14期の予科練(海軍甲種飛行予科練習)だった著者が、同じく旧制中学3年で予科練を受験した友人の死をきっかけに、予科練時代を過ごした天理、綾部、大津を回り、過去の追憶の旅に出る、という内容。「エピローグ」には、当初この原...
著者は1928年生まれ。日本敗戦から33年後の1977年、第14期の予科練(海軍甲種飛行予科練習)だった著者が、同じく旧制中学3年で予科練を受験した友人の死をきっかけに、予科練時代を過ごした天理、綾部、大津を回り、過去の追憶の旅に出る、という内容。「エピローグ」には、当初この原稿は同人誌『直』に連載し、周囲からの出版の勧めを断っていたとある。だが、著者は、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故を見るにつけ、日本敗戦の責任が追及されなかったことが、まわりまわってこの出来事をもたらしたと感じ、出版を決意したという。 いたいけな旧制中学3年生が救国の信念に燃えて予科練を志願するも、自分たちが促成の消耗品である現実を突きつけられていく様子、特攻志願が予備学生上がりの将校によって半ば恣意的に決められていくことを知ったときの幻滅、そして、母と姉との面会を許されたとき、大本教本部跡の廃墟で出会った中年男性から、もうすぐ戦争は終わるのだから、自分の命を大切にすべきだと告げられたこと。島尾敏雄や吉田満も言っていたが、戦争中の青少年は、1年生まれ年が違うだけで、見聞や経験がまるで違ってしまう。一言で「予科練」とまとめられるが、年代と場所で経験も多様であることを教えられた。
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