1,800円以上の注文で送料無料

天災と日本人 の商品レビュー

4.5

12件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/11/30

日本人は太古から繰り返し天災に見舞われ、高等に訓練されながらも忘れてしまう。人間そのものが忘れてしまう生き物だからだ。 今度こそ忘れてはならない、と思います。

Posted byブクログ

2021/05/09

昭和の始めに指摘されていることをしてこなかったのか、と愕然とした。台風も地震も津波も幾度となく日本を襲ってきたし、これからもあるのだろう。 東日本大震災から10年が過ぎ、これからの10年のためにも記憶に留めておかなくては、と思う。阪神淡路大震災もあったのに、活かしきれなかったのは...

昭和の始めに指摘されていることをしてこなかったのか、と愕然とした。台風も地震も津波も幾度となく日本を襲ってきたし、これからもあるのだろう。 東日本大震災から10年が過ぎ、これからの10年のためにも記憶に留めておかなくては、と思う。阪神淡路大震災もあったのに、活かしきれなかったのは私たちの心算ではなかったかと思った。 昭和の始めという時代のためと思われる、表現が随所にみられ、良し悪しではなく、当時の日本の雰囲気を感じ取れたのが興味深い。

Posted byブクログ

2021/04/09

明治に生まれ、大正関東大震災を経験し、昭和初期まで活躍した物理学者で、漱石の門人であることで有名な著者。関東大震災が発生した際、建物の構造を冷静に分析して余裕を見せる姿や、外国人が井戸に毒物を入れる、爆弾を炸裂させるというデマに対し、科学知識があれば惑わされないのに……という知見...

明治に生まれ、大正関東大震災を経験し、昭和初期まで活躍した物理学者で、漱石の門人であることで有名な著者。関東大震災が発生した際、建物の構造を冷静に分析して余裕を見せる姿や、外国人が井戸に毒物を入れる、爆弾を炸裂させるというデマに対し、科学知識があれば惑わされないのに……という知見は流石であった。火山活動を含む地震や、台風を筆頭にする風水害と日本人というテーマでの各随筆を、非常に興味深く読ませてもらった。和辻哲郎の『風土』も読んでみたい。

Posted byブクログ

2021/04/05

寺田寅彦の自然災害に関する随筆を集めたもの。寺田の随筆が読み応えがあるのはもちろんとして、わたし、山折哲雄さんの著作にも親しんでいて、随筆の選択、はじめに、と解説も、読み応えがありました。 読み継がれていくべき一冊です。

Posted byブクログ

2021/03/11

東日本大震災直後(2011年7月)に編まれた、寺田寅彦随筆選である。編者の意図を超え、コロナ禍の現代に読むと、そのあまりにもいまの我々のために言ってるかのような言葉に溢れていて、びっくりした。 その幾つかを、以下に羅列する。 「天災と国防」(昭和9年) ・文明が進めば進むほど...

東日本大震災直後(2011年7月)に編まれた、寺田寅彦随筆選である。編者の意図を超え、コロナ禍の現代に読むと、そのあまりにもいまの我々のために言ってるかのような言葉に溢れていて、びっくりした。 その幾つかを、以下に羅列する。 「天災と国防」(昭和9年) ・文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す ・日本のような特殊な天然の敵を四面に控えた国では、陸海軍のほかにもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然ではないかと思われる。 「流言蜚語」(大正13年) ・(大地震の最中毒薬を暴徒が井戸に投じたという噂に関して)いわゆる科学的常識というものからくる漠然とした概念的の推算をしてみただけでも、それが如何に多大な分量を要するだろうかという想像ぐらいはつくだろうと思われる。 ・もちろん常識の判断はあてにならない事が多い。科学的常識はなおさらである。しかし適当な科学的常識は、事に臨んで吾々に「科学的な省察の機会と余裕」を与える。そういう省察の行われるところにはいわゆる流言蜚語のごときものは著しくその熱度と伝播能力を弱められなければならない。 「政治と科学」(昭和10年) ・他国では科学がとうの昔に政治の肉となり血となって活動しているのに、日本では科学が温室の蘭か何ぞのように珍重されている。 「日本の自然観」(昭和10年) ・現代の日本では、ただ天恵の享楽にのみ夢中になって天災の回避のほうを全然忘れているように見えるのはまことに惜しむべきことと思われる。

Posted byブクログ

2016/02/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 津波に懲りて、はじめは高いところだけに住居を移していても、5年たち、10年たち、15年20年とたつ間には、やはりいつともなく低いところを求めて人口は移って行くであろう。そうして運命の1万数千日の終わりの日が忍びやかに近づくのである。鉄砲の音に驚いて立った海猫が、いつの間にかまた寄って来るのと本質的の区別はないのである(p.25)  理科教育が妙な型にはいって分かりやすいことをわざわざ分かりにくく、面白いことをわざわざ鹿爪らしく教えているのではないかという気がする。子供に固有な鋭い直感の力を利用しないで頭の悪い大人に適合するような教案ばかりを練り過ぎるのではないかと思われる節もある。これについては教育者の深い反省を促したいと思っている次第である。(p.81)  雨のふり方だけでも実に色々様々な降り方があって、それを区別する名称がそれに応じて分化している点でも日本はおそらく世界中随一ではないかと思う。試みに「春雨」「五月雨」「しぐれ」の適切な訳語を外国語に求めるとしたら相応な困惑を経験するであろうと思われる。「花曇り」「霞」「稲妻」などでも、それと寸分違わぬ現象が日本以外のいずれの国に見られるかも疑問である。たとえばドイツの「ウェッターロイヒテン」は稲妻と物理的にはほとんど同じ現象であってもそれはけっして稲田の闇を走らない。あらゆる付帯的条件がちがいしたがって人間の感受性に対するその作用は全然別物ではないかと思われるのである。(pp.109-110)  昔の日本人が集落を作り架構を施すにはまず地を相することを知っていた。西欧科学を輸入した現代日本人は西洋と日本とで自然の環境に著しい相違のあることを無視し、したがって伝来の相地の学を蔑視して建てるべからざるところに人工を建設した。そうして克服しえたつもりの自然の厳父の揮った鞭のひと打ちで、その建設物が実に意気地もなく壊滅する、それを眼前に見ながら自己の錯誤を悟らないでいる、といったような場合が近ごろ頻繁に起こるように思われる。昭和9年10年の風水害史だけでもこれを実証して余りがある。(p.124)  まったく予測し難い自信颱風に鞭打たれ続けている日本人はそれら現象の原因を探求するよりも、それらの災害いを軽減し回避する具体的方策の研究にその知恵を傾けたもののようにも思われる。おそらく日本の自然は西洋流の分析的科学の生まれるためにはあまりにも多彩であまりに無常であったかもしれないのである。(p.136)

Posted byブクログ

2015/03/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

寺田寅彦は、日本文化や日本事情の授業を担当した私にとっては、よく見ていた名前だったので、良書だと思っていました。で、実際に読んでみてそうでした^^ 「天災は忘れたころにやってくる」という警告を発したということでも有名な寺田寅彦。この随筆集に収録されているのは、昭和25年ぐらいまでのもので、「天災と国防」という短編は昭和9年(1934年)、日本が中国大陸に侵略し始めていたころの時代に、書かれた随筆です。 この「天災と国防」は、随筆集の冒頭に収録されていますが、文明と災害というテーマで、「陸海軍の防備が十分であっても肝心な戦争の最中に安政程度の大地震や今回の颱風あるいはそれ以上の者が軍事に関する首脳の設備に大損害を与えたらいったいどういうことになるであろうか(20頁)」と、暗に身命賭してお国のために戦争するということを貴い愛国心・大和魂などとしていることに、疑問を呈し、批判的な文脈で述べています。なかなか読みごたえのある随筆集です。 この随筆集を編者である山折哲雄氏は、冒頭で寺田寅彦がいう自然の二面性、「厳父のごとき自然」と「慈母のごとき自然」について、「歴史的な背景を含めて科学的に明らかにした」と解説していますが、そのことを感じられるのがこの随筆集の最後に収められている「日本人の自然観」です。その短編の見出しを列記しますと、 緒言 日本の自然 日本人の日常生活 日本人の精神生活 結語 となりますが、文体・表現法は随筆的ですが、ほとんど論述的な構成で、これもまたかなり読み応えあります。 結語にある氏の要約だけ引用しますと、「日本の自然界が空間的にも時間的にも複雑多様であり、それが住民に無限の恩恵を授けると同時にまた不可抗な威力をもって彼らを支配する、その結果として彼らはこの自然に服従することによってその恩恵を十分に享楽することを学んで来た、この特別な対自然の態度が日本人の物質的ならびに精神的生活の各方面に特殊な影響を及ぼした(143頁)」。前述の山折氏が、「なぜ今『寺田寅彦』なのか」と切り出しています。山折氏が編集したこの随筆集は2011年に角川学芸出版から出ています。そうです、あの「3.11」があった年です。そういう意味で、災害への警告・反省を促したものとも読み取れますが、今読み終えて思うに、暴力・武力がきな臭く出ている今でこそ、この本を読むことで、もっと人類史観的に立って考えた方がいいんじゃないかな?行動した方がいいじゃないかな?と思いました。 おススメの一冊です。

Posted byブクログ

2013/06/14

深刻さはないが、戦争だけでなく、災害にも備えよ、との繰り返しの呼びかけは正鵠を得ている。「愛国心も大和魂も進化すべき」なんてにくい表現である。 科学的思考で、流言飛語を却下するエッセイも素晴らしい。自分で考え、判断できるようになることが大切だ。 文明が進むと被害が大きくなるこ...

深刻さはないが、戦争だけでなく、災害にも備えよ、との繰り返しの呼びかけは正鵠を得ている。「愛国心も大和魂も進化すべき」なんてにくい表現である。 科学的思考で、流言飛語を却下するエッセイも素晴らしい。自分で考え、判断できるようになることが大切だ。 文明が進むと被害が大きくなることや事故の責任の取り方、地を相する術についての指摘も鋭い。

Posted byブクログ

2011/12/24

請求記号:519.9テ 資料番号:011440021 日本の科学は「天然の無常」という考え方が根底にあると言っています。

Posted byブクログ

2011/12/23

寺田寅彦さんの文章に中学生の頃初めて出会って以来の大ファン。(「茶碗の湯」とか「金平糖」とかだったかな)岩波文庫で全集持ってますが、買ってしまいました。やっぱり好きです。お弟子さんの中谷宇吉郎さんも大好きです。

Posted byブクログ