騙王 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
騙し合いのファンタジーは、どこかミステリーに似ているような気がします。 ……とはミステリーと推理小説の区別がつけられない私の言い分です。 最後に明かされた「真実」を一度疑ってかかって正解でした。西尾作品を読むと、こういうラストを疑う癖がつくようです。 すさまじい、の一言でした。王国内部の汚い部分を書くか否かは作家に寄りけりだと思うのですが、これはその汚い部分を利用してのし上がる少年の物語です。けれどその中には人の愛があったり、忠義や信頼があったり……性根が曲がりに曲がった(誉め言葉)主人公を軸に置いているだけに、そんな部分を見るとほっとする思いでした。 気高いジェスタの姫君・リズ。 真実を求める国史編纂官の娘・ルー。 この物語の女性(とはいってもこの二人)はそれぞれに美しいのです。したたかな女性も純粋な女性も好き。そんな主な登場人物に混ざってくる高金利の金貸し・セドリックもいい味を出しています。 騙すなら騙し切って欲しい、本人が騙されたと分からないように――そんな嘘が好きな私のつぼを突かれたような思いです。ルーは何も知らずに歴史をまとめて、そしてそれを後世に伝えて死んでいくのだと思うと……。安易に「可哀想」と言えないのが、また。彼女は本当に「何も知らない」、知ってしまった真実が作り上げられたものだとも知らないのですから。 物語の間に挟まれる歴史の断片も、彼女の残したものなのかな、とぼんやり。 ――お前たち、愛すべき阿呆どもは、俺に命を預ける覚悟はあるか? この独白に痺れました。
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面白かったです。 こういう人は実際に存在しただろうな。 そして今の世の中にも、騙ることでいろんなものを手に入れている人が いるだろうと考えながら読み終えました。 メディアワークス文庫の今月の新刊の中で一番読んでみたいと思った本 だったので、ハズレではなくてよかったです。
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