海の波恋の波 の商品レビュー
19世紀オーストリアはウィーンの詩人・劇作家グリルパルツァー(1791-1872)の、ギリシア神話に材を採った恋愛悲劇、1829年。へレスボント海峡を挟みヨーロッパ側の岸にいるヘーローは愛の女神アフロディーテの神殿に仕える女神官で、対岸のアジア側に住む青年レアンダーと恋に落ちる。...
19世紀オーストリアはウィーンの詩人・劇作家グリルパルツァー(1791-1872)の、ギリシア神話に材を採った恋愛悲劇、1829年。へレスボント海峡を挟みヨーロッパ側の岸にいるヘーローは愛の女神アフロディーテの神殿に仕える女神官で、対岸のアジア側に住む青年レアンダーと恋に落ちる。ヘーローが自分の住む塔に灯す明かりを頼りに、レアンダーが夜ごと海峡を泳いで渡り、逢いに行く。 宗教上の掟や社会的な桎梏を超えて人間の内面から迸る、恋愛という熱情のどうしようもない優位を謳う。こうした恋愛讃歌は、必然的に、神々や社会に反抗する人間が辿る悲劇的な結末に到るしかないのではないか。なぜなら、超越的な位置から個人を抑圧してくる機構に抗う実存、その自由性は、悲劇的な敗北を通して逆照されるしかないから。破滅が予定されていてなお止むにやまれず希求せずにはおれないのが、自由であるから。その意味でこの敗北は、決して惨めなものではなく、寧ろ豪奢であると云えないか。 「おい気をつけろ、禍の深淵がお前の傍で大口を開いて居るぞ」 "失墜"という危機的な情況としてのみ、そうした反語的な相に於いてのみ、捕捉し得る自由。 なお、イギリスのロマン主義詩人バイロンはこの神話の真実性を確かめようとして実際にへレスボント海峡を泳いで渡ったという。興味深い挿話。
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ギリシア伝説に材をとった、ヘーローとレアンダーの悲戀を描いた戯曲。 この1937年版(手元にあるのは1989年、第7刷)は旧字体で旧仮名遣い。 頁がだんだんヤケてきて……、でもまだ読めます。 (ト書きの部分だけ、字が小さくて、読みにくくなってきている)。 この作品に関しては、実際...
ギリシア伝説に材をとった、ヘーローとレアンダーの悲戀を描いた戯曲。 この1937年版(手元にあるのは1989年、第7刷)は旧字体で旧仮名遣い。 頁がだんだんヤケてきて……、でもまだ読めます。 (ト書きの部分だけ、字が小さくて、読みにくくなってきている)。 この作品に関しては、実際にヘレスポンド海峡を泳ぎ渡って確かめたという、かのバイロン卿の逸話が印象的です。 ……貴方、泳ぎは、得意でしたっけ?
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