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2011/11/14

「空中征服」は、プロレタリア文学であるが異色の喜劇仕立ての内容である。  小説は、煙突から出る煤煙のため、世界一不健康な都市であった大阪を救うため、空中征服を思いたった賀川豊彦が大阪市長になるところから始まる。  余談だが、「ブラック・レイン」を見た人なら、飛行機から映し出された...

「空中征服」は、プロレタリア文学であるが異色の喜劇仕立ての内容である。  小説は、煙突から出る煤煙のため、世界一不健康な都市であった大阪を救うため、空中征服を思いたった賀川豊彦が大阪市長になるところから始まる。  余談だが、「ブラック・レイン」を見た人なら、飛行機から映し出された大阪の街が、煙突から排出される煙で霞んでいたことが印象に残ったと思う。今でこうだから昔はもっとひどかったのだろう。本文ではこう皮肉っている。  『太陽の光線が、煤煙のために防げられて、市庁舎の窓まで届かないものだか、池上市長と関助役は昼間も電気灯をつけて執務せねばならぬということは、三十三世紀後にはとても考えられたことではないが、事実はまったくそうであるから仕方がない。中央公会堂のすぐ裏にたつ市庁舎には、昼間に電灯があかあかと灯っているのである。』  ここからSF調に話が進んでいく。まずアダムとエバが出てきて、空を汚した貴任が誰かと喧嘩になり、エバが『まったく煙突は低能な男子文明の結果であると私は考えるものでございます』と男優位の社会に文明批判をすれば、次に出てくる大塩平八郎は、市民の生活を守ることより、利権のほうを大事にする議員む金権体質を批判する。  はたまた太閤さんは公娼制変を批判し、自由廃業論をぶつなどし加川市長を応援するが、煙突からの煤煙を減らす案は、変な人物がいっぱい出てくるため議会が大混乱になり、実現不可となってしまう。この後この物語は、ウ-マンパワーが作製したり、都市問題を批判したりして話が進んでいく。  賀川がいかに先見性をもっていたかは「煙突』の二文字「原発」に置き変えれば、よく分かる。そして、政治的伏況が当時とあまり変わっていないことが読み取れる。  本書に出てくる、市会議員の名前がまた面白い。船場繁昌、安治川安五郎、梅田馬造、桜島安五郎、松島正五郎……、この面白さは、大阪の人でなければわからないかな。  

Posted byブクログ