恋染め笠 の商品レビュー

山手樹一郎(著者)

2024/11/05

夏目鮎太郎は、夜中に長持ちの中に生きている女を入れてはこんでいる二人組の男たちに遭遇します。見過ごすことはできないと、鮎太郎は女を救出しますが、彼女は自分の名前もわからず、小さな子どものような振る舞いをして、鮎太郎をとまどわせます。やむなく鮎太郎は、彼女を「お夢さん」と名づけますが、彼女を亡き者にしようとする悪人たちが鮎太郎に襲いかかります。

やがてお夢さんの正体は、和州郡山の家老である生田頼母の娘の美穂であることが判明します。彼女は、頼母に敵対する勢力によってオランダ渡りの毒薬を飲まされ、精神の病に陥ったのです。敵の首領である小倉内記は、藩主の奥方であるお牧の方とただならぬ関係にあり、典医の黒木滄庵から入手した毒をつかって、邪魔者である頼母の娘の精神を狂わせ、さらに彼女を殺害しようとします。鮎太郎は頼母の依頼を受け、旅芸人の江戸屋紫などの仲間たちとともに、美穂の身を守ろうとします。

浪人者がお家騒動に巻き込まれるという、著者の作品の多くに採用されている構図がここでも見られますが、他の作品にくらべると敵がいかにもたよりなく、緊張感を欠いている印象があります。