黒い蝶 の商品レビュー

井上靖(著者)

2011/08/08

井上靖の唯一の書き下ろし長編小説。らしい。

口先だけで生きてきたような男が些細なことで知り合った没落富豪から金を毟り取ろうとするけれど、いつしかその口実と真剣に向き合うようになると言う話。
いい加減な主人公も、人生をはすっぱに生きながら嫌味を言い続ける音楽家もどこかしら愛嬌があって憎めない。
描写不足は感じるものの、話の流れに引き込まれぐいぐい読み進めてしまった。都合がいい展開が多いし、最後無理矢理にタイトルに結びつく表現が出てくるのは興ざめだけど、それでも十分に楽しめた。
特に海外で読んだので、美しい日本語が並んでいただけで満足度が上がったのかも。