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ウルフ・ホール(上) の商品レビュー

3.5

13件のお客様レビュー

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2011/12/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

14世紀イギリスが英国国教会をつくる経緯を、王の腹心トマス・クロムウェルの立場から描いた小説。宗教弾圧のための処刑の残虐さはショッキングです。

Posted byブクログ

2011/10/26

本書は、16世紀の英国、おそらく英国史上もっとも有名な王ヘンリー8世の宮廷を政治家トマス・クロムウェルの視点で描いた歴史小説。 2009年度、英国で最も優れた長編小説に与えられるブッカー賞と、全米批評家教会賞というふたつの権威ある賞を受賞した。 でも、あれ?ブクログ読者の評価、低...

本書は、16世紀の英国、おそらく英国史上もっとも有名な王ヘンリー8世の宮廷を政治家トマス・クロムウェルの視点で描いた歴史小説。 2009年度、英国で最も優れた長編小説に与えられるブッカー賞と、全米批評家教会賞というふたつの権威ある賞を受賞した。 でも、あれ?ブクログ読者の評価、低いですね(笑)日本人受けはしないのかな? 当時ヘンリー8世は王妃であるキャサリンの侍女であったアン・ブーリンとの結婚を望んでいたため、キャサリン王妃との婚姻の無効化を望んでいた。 (カトリックは離婚を認めていないため、それまでの結婚そのものを無効とするよう教皇クレメンス7世へ認可を要請した) このくだりは映画『ブーリン家の姉妹』にも詳しい。 映画をご覧になっていなくとも、シェイクスピアのヘンリー8世をご存知の方は多いだろうから、その下地にはなじみがあるだろう。 だが、本書では枢機卿ウルジーは悪人ではないし、クロムウェルその人もまたそうである。 ヘンリーの宮廷の「ヒキガエル」とも比喩されるクロムウェルだが、本書では悪役の立場は大法官トマス・モアと逆転している。 そういう意味において、本書はもう一つの別の視点にたった歴史劇『ヘンリー8世』だ。 ヘンリー8世の治世は、後に”中世からの脱却”したといわれる時代だ。 歴史的には、アン・ブーリンと再婚するためにカソリックから離脱し宗教改革を成し遂げ、イングランドはそれまでのローマとイングランド王との二重支配を終わりにした。 本書に描かれるクロムウェルも、中世的な人物ではない。 貴族出身ではないことが致命的だったこの時代、聖職者でもない彼は自分の力だけでありないほどの出世をした。 本書の彼はヒキガエルなどではなく、現代的な実務家である反面、人間的な優しさ、道徳を備えてもいる。 枢機卿にかわいがられ丸暗記しているほど聖書にも通じていたが、カソリックの教えー子供しか信じないようなことを信じるよう強いてきた権力を信じてはいない。 大法官トマス・モアは自らの信念において、異教徒に次々と非人間的な拷問と処刑を行うが、クロムウェルは流される血を抑えようと奔走する。 クロムウェルとモアは対照的に描かれる。子供時代の境遇もさることながら、信仰を貫き、異教徒を殺すのに何のためらいもみせないモアと、親しい友人である学者や商人をモアに殺されてなお、逆にモアを裁く立場になったとき、モアが少しでも苦しみから逃れられるよう王に慈悲を乞うよう助言するクロムウェル。 これまでのトマス・モア像は人々に尊敬される聖人だったが、ここでは立場は入れ替わる。 かたくなに信仰を貫こうとし、それ以外を否定するモアと、実際のところ何も信じてはいないクロムウェル。 個人と信仰はどちらが貴まれるべきなのか。ヒラリー・マンケルは冷ややかに問う。 アン・ブーリンはこの物語の幕が下りた後に断頭台に消える。そして次の王妃になったのは、クロムウェルが密かに思いを寄せた女性、アンの侍女であったジェーン・シーモアだった。 アンの時代、シーモア家は近親相姦というスキャンダルから、「ウルフ・ホールー狼の(ように野蛮な)館」と呼ばれ蔑まれた。 けれども最も節操なく近親相姦がはびこった獣の巣窟だったのは、何を隠そうヘンリーの宮廷だ。 クロムウェルも、その後4番目のお妃選びの際での失態がもとで断頭台に送られている。彼を苦しませるために、王はあまり経験のない処刑人を選んだとまで言われた。 「肉を食べ飽きた犬は、骨までしゃぶりつくすはらぺこの犬にとって替わられる。名誉で太った人物が去れば、痩せた男がやってきます。」 この歴史劇は、リベンジとリピートの物語ともいえるだろう。だがどこか滑稽で乾いている。 最初はノンストップで読み通し、その後すぐにじっくり読みかえした。この本は最初よりも二度目に読む方が面白いのだ。 本当の登場人物は、幸運、自由、基準、偽の外見、追従的暴言、償い、堅忍...といった者たち。 苛烈な時代の悲劇は、悲劇としてではなく滑稽さをもって描かれる。 これはこの独特の文体によるところが大きい。柔らかで捉えどころがないようでいて、これ以上ないほど堅実。 訳者は『レクイエムの夜』の宇佐川晶子さん。名訳だと思う。

Posted byブクログ

2011/08/23

16 世紀イングランドを少し勉強してから読むと良いな。 中世の宮廷、宗教、政治って結構怖い。 だから物語の素材として魅力的なんだろうが。 2009 年 ブッカー賞受賞作品。 2009 年 全米批評家協会賞受賞作品。

Posted byブクログ