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伝道の書に捧げる薔薇 の商品レビュー

4.5

13件のお客様レビュー

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2012/09/01

本書は、60年代に登場したニューウェーブSFを代表するロジャー・ゼラズニイの中・短篇集です。 スランギーで若々しい文体に目を向けがちですが、全編を通じて詩的な表現がみられ、粗くも繊細な二面性を感じられる文章でした。 なかでも「聖なる狂気」は、物語自体は時間の逆行をモチーフにした平...

本書は、60年代に登場したニューウェーブSFを代表するロジャー・ゼラズニイの中・短篇集です。 スランギーで若々しい文体に目を向けがちですが、全編を通じて詩的な表現がみられ、粗くも繊細な二面性を感じられる文章でした。 なかでも「聖なる狂気」は、物語自体は時間の逆行をモチーフにした平凡な内容なのですが、その時間が逆行する様を見事なまでに表現しており、その巧みな表現だけで楽しめる一作です。 その他面白かったのは、「伝道の書に捧げる薔薇」と「この死すべき山」。 特に前者は、やはり最後がねぇ…この作品に限らず「十二月の鍵」や「このあらしの瞬間」も終盤のどんでん返しが印象に残ってます。

Posted byブクログ

2011/12/07

ロジャー・ゼラズニイの1960年代中盤までに発表した中短編15作を収録した短編集。 すごく良かった。 40年以上昔の作品なのに、古臭さを感じさせずなんとも言えないカッコよさと深い余韻に浸れるSF短編集でした。この本が今は絶版であるのは勿体無い。 アイデアやプロットや登場人物、...

ロジャー・ゼラズニイの1960年代中盤までに発表した中短編15作を収録した短編集。 すごく良かった。 40年以上昔の作品なのに、古臭さを感じさせずなんとも言えないカッコよさと深い余韻に浸れるSF短編集でした。この本が今は絶版であるのは勿体無い。 アイデアやプロットや登場人物、シチュエーション等は面白かったり驚かされたりするのに、文章が野暮ったいなあ、回りくどいなあと感じて中身にあまり引き込まれなかったり、その結果友人に勧め難かったりする小説があります。 この短編集は、そのような小説とは異なり、アイデアやプロットは50年代のSF小説にもありそうな古い設定のものもありますが、兎に角カッコよく、一気に引き込まれ、読み終わった後更に含みがあるのではとあれこれ想像しながら心地良い余韻に浸れ、友人にも自信を持って勧められると思いました。 ただカッコよさも、クールさや淡々としているだけというのでは無く、コミカルさや逆にシリアスな状況、深い情感も文章でちゃんと表現されているので、ただのスタイリッシュなだけの小説とは違う味わい深いカッコよさが伝わるのだろうと想像します。 私のこの感想が、野暮ったくて、回りくどいので伝わり難いのですが、私にとってゼラズニイは、クールすぎずホットすぎず”ちょうどいいカッコよさ”を伝えてくれる貴重な作家だなあということです。 この短編集の作品は、どれもカッコよさの中に深い情感とコミカルさまたは哀愁を味わえる、私にとっては傑作ばかりでした。 その中でも特に好きなのは、『その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯』『この死すべき山』、『十二月の鍵』、『伝道の書に捧げる薔薇』、『このあらしの瞬間』です。 <備忘録> ●この死すべき山 惑星ディースルにある誰も征服したことが無い山の登攀にまつわる話。 ●十二月の鍵 極寒惑星に適応するため猫形態に改造された人間たちが、新生爆発の影響で目指すはずだった惑星が消滅したところから始まる話。 ●その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯 金星の海に棲息する巨大魚竜(通称イッキー)捉えることに命を賭する人々の熱くしかしコミカルにも感じる話。 ●伝道の書に捧げる薔薇 探検隊の一員として火星にやってきた詩人(言語学の専門家でもある)が、火星人の歴史的・宗教的文書を読み解いていくことろから始まる話。火星の美しい娘との恋愛も絡んでくる。 ●このあらしの瞬間 「白鳥の国」と呼ばれる辺境の惑星で、害獣から市民を守る仕事につく男の話。

Posted byブクログ

2010/09/26

ディレイニーと並ぶアメリカン・ニューウェーブSFの代表格の作家の最盛期作品を集めた短編集ですが、この甘々な邦題に辟易してこれまで手が出ずじまい。でも気にはなっていたので、amazonのマーケット・プレイスでゲットして読んでみました。 か・・・ カッコいい・・・orz SFとし...

ディレイニーと並ぶアメリカン・ニューウェーブSFの代表格の作家の最盛期作品を集めた短編集ですが、この甘々な邦題に辟易してこれまで手が出ずじまい。でも気にはなっていたので、amazonのマーケット・プレイスでゲットして読んでみました。 か・・・ カッコいい・・・orz SFとしてのアイディアやプロットは、これといって目新しいものはありません。表題作の「伝道の書に捧げる薔薇」に至っては、地球の若き詩人と火星の美しい舞姫の悲恋という50年代スペオペ並みの古臭い設定(^_^; が、「SFとして」という基準を超えて、物語としての完成度が非常に高いんですね。シンプルでありがちなプロットを、圧倒的な筆力に嫌みにならない程度の詩情を込めて、あくまでもクールにスタイリッシュに纏め上げる手法が実にカッコいい。ハーラン・エリスンとジェイムズ・ティプトリー・ジュニアを足して2で割ったような感じか?ヽ( ´ー`)ノ表題作もこの人の手に掛かると、単なる悲恋ものでは終わりませんでしたね。ラストのどんでん返しには呆然としてしまいましたよ。これまで読んだラブ・ストーリーの中で、最も後味の悪い作品かもしれない・・・(^_^; 他に気に入ったのは、「十二月の鍵」「この死すべき山」「このあらしの瞬間」あたりかなー。いずれの作品も、抑制の利いた文章の行間に哀感と情熱を秘めた、職人肌の傑作です。 こんなに腕の立つ作家なのに、古い上にマニアックなせいか現在ではほとんどの邦訳が絶版で入手困難な状態。かろうじて版を重ねているのが「地獄のハイウェイ」って、何でよ!(笑) とても気に入ったので、とりあえず「光の王」はゲット。「わが名はコンラッド」や「魔王子シリーズ」も頑張って探してみたいと思います!しかし、どれも古いな・・・(^_^;

Posted byブクログ