田村隆一詩集 ワインレッドの夏至 の商品レビュー
「おれ」を表現するためには 沈黙を創り出す以外にない 樹木の枝からたわわに垂れさがる果実 のごとき沈黙 果汁をたっぷりふくんだ沈黙を創り出そうとするなら まず歩くことだ 野原を歩くことだ 秋の燃えつきるまで燃える夕陽の つるべ落とし 丘の雑木林まで火のように燃えあがる あの魂の色...
「おれ」を表現するためには 沈黙を創り出す以外にない 樹木の枝からたわわに垂れさがる果実 のごとき沈黙 果汁をたっぷりふくんだ沈黙を創り出そうとするなら まず歩くことだ 野原を歩くことだ 秋の燃えつきるまで燃える夕陽の つるべ落とし 丘の雑木林まで火のように燃えあがる あの魂の色のなかを どこまでも歩くことだ ---------------- 時代そのものに苦しめられ、政治として、武器として言葉を使う一方で、ふとした瞬間に全てを諦めてただ自然と戯れるような両面性を持っている。喊声と沈黙、燃えるような野原と静謐な寒気との間で引き裂かれながらポエジーの中を歩き続ける。
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