幻世(まぼろよ)の祈り(3) の商品レビュー

天童荒太(著者)

2011/01/30

いよいよ第３部。２部までに比べて、少しだけ心救われる場面や、人と人の関わり合うことの温かさが描かれ始めて、この先どう展開していくのかた楽しみ。美術教師の浚介は、ふたつの事件を経て、虚無に閉ざされていた彼の心にも変化が訪れていた。元生徒との出会いは、ちょっとだけ心温かくなるような場面。誰かが誰かに優しさを、そのまた誰かも誰かに優しさを、そうやって連鎖していく世界が見えて、ちょっと心地良く読めた。一方の馬見原は、冬島母子を全身全霊で守っているにもかかわらず、妻や娘との関係は歪んだまま。病気となった妻との関わりから逃げているようにも見え、なんだか妙にリアル。けど、ちょうど中盤となったこの３部で、暖かい展開もちらほらあったから、最後は、それぞれがどんな風に成長していくのかが楽しみです。