踊るジョーカー の商品レビュー
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引きこもりの名探偵「音野順」と,ワトソン役のミステリ作家「白瀬白夜」が活躍する短編集。それぞれの短編は,プロットもトリックも平凡なのだが,作品の雰囲気が素晴らしい。古きよき時代の本格ミステリを思わせるような様式美が守られつつ,そのパロディのような作りになっている。探偵と警察の関係,事件への関与の在り方,トリックが早業殺人だったり,容疑者が少ない状態で殺人をしたり…。リアリティこそないが,本格ミステリらしい作品ばかり。北山猛邦が本格ミステリを愛してやまないことが垣間見える,魅力的な短編集である。おすすめ。 個々の作品の所感は以下のとおり ○ 踊るジョーカー 大量のトランプが散らかされていた密室で南斉一郎が刺殺される。凶器のナイフは,多量のトランプを貫いていた。容疑者は三人。南斉一郎の子,南斉貴一。その恋人である藍子。そして,古くからの使用人の根津。密室の合鍵を持っている貴一が最大の容疑者として警察から疑いを掛けられる。 密室のトリックは,早業殺人。日頃からトランプで一郎を脅しておき,多量のトランプを換気口から投入しておき,それを見て悲鳴を上げた一郎のために部屋に入り,その直後に根津が一郎を殺害した。問題は凶器。犯人は,ナイフでトランプを貫き,円状にしたトランプを転がすことで,ナイフを手に入れ殺害をしていたのだ。トリックは陳腐だが,作品全体の雰囲気,キャラクターが秀逸。なかなかの作品。 ○ 時間泥棒 上野家で,アナログ時計が次々に盗まれるという事件があった。いずれも安物の時計だが,なぜ時計だけが盗まれるのか。上野カイという男は,姉,上野アサヒの恋人である長崎という男と一緒に,音野の事務所を訪れる。真相は,合鍵を持つ長崎が盗聴の際の邪魔な音をなくすために,アナログ時計を撤去していたというもの。音野と白瀬は長崎の本性をアサヒに伝える。プロットは特に目新しいというほどではないが,雰囲気がよく,これもなかなかの秀作。 ○ 見えないダイイングメッセージ 笹川明夫が殺害されるシーンから,この物語が始まる。明夫は,自分しか暗証番号を知らない金庫が開けられなくなるのを防ぐため,金庫の暗証番号を示すダイイングメッセージを残すために,ポラロイドカメラで写真を撮影する。ダイイングメッセージの真相は,映ったものではなく,写真そのものに指紋で残されていた。今回は音野順ではなく,兄,要がダイイングメッセージの謎を解き,順は,真犯人が依頼者である笹川明夫の子,笹川晃であることを見抜く。 ○ 毒入りバレンタイン・チョコ ある大学の研究室で,バレンタイン・チョコの中に毒が入っており,それを食べた女学生が倒れるという事件があった。32個入りのチョコのうち,1つのチョコから毒が検出された。ゼミに所属している2人の女学生と2人の男子学生がチョコを食べていた。無差別殺人なのか,女学生の自作自演なのか。真相は,男子学生が,女子学生の気を引くために致死量に至らない毒を飲ませたというもの。トリックは,磁石を使い,チョコを包んでいた包みを利用して狙っていた女学生がチョコを食べるチャンスを利用して毒を仕掛けたというもの。仕掛けがあるチョコをほかの人が食べるときは,仕掛けを作動させていない。犯人にとっては,この犯罪は,恋する人に接近するためのイベントだったのだ。チャンスを待った気の長い犯罪だった。 ○ ゆきだるまが殺しにやってくる 音野と白瀬が遠方の依頼を終えた帰りに道に迷ってたどり着いた山荘で,事件が起こる。山荘は,笹宮家という名家。山荘では,一人娘の美子の結婚相手を見つけるために,雪だるまを作るというイベントが開催されていた。イベントの最中,二人の挑戦者のうちの一人,藤原昆が殺害される。凶器のバールは雪だるまの腕のところにあった。まるで,雪だるまが殺害をしたかのように。 真相は,美子が無理やり結婚させられることを辞めさせるために,殺害を行った。トリックは,風船を利用して死体を隠し,殺害された時間をごまかすというアリバイトリック
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≪徐々に増えてく探偵事務所の備品?にも注目≫ 気弱で引きこもりがちな「音野順」とワトソン役である「白瀬白夜」が遭遇する事件が掲載された短編集. いまでは市民権を得たといってもいいライトミステリに属するのかな. 個人的には主役2人はもちろん「上野アサヒ」や「深津」が気になる. 続...
≪徐々に増えてく探偵事務所の備品?にも注目≫ 気弱で引きこもりがちな「音野順」とワトソン役である「白瀬白夜」が遭遇する事件が掲載された短編集. いまでは市民権を得たといってもいいライトミステリに属するのかな. 個人的には主役2人はもちろん「上野アサヒ」や「深津」が気になる. 続編には出ているのかしら. 若干トリックや動機が「どうなのそれ?」というような感じがしないでもなかったけれど,『物理の北山』と巷で噂の方なので,それはそれでOK.
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面白くなかった。新年早々残念……。 主人公のキャラ設定に惹かれたけど、 それが逆に面白くなくしてる。山場もオチもない。トリックも読者に考えさせるような仕組みでもなし。だからと言って盛り上がる謎解きがあるわけでもなし。犯人もすぐわかる。まぁ、これは、犯人はこの人だからーと読者に読み...
面白くなかった。新年早々残念……。 主人公のキャラ設定に惹かれたけど、 それが逆に面白くなくしてる。山場もオチもない。トリックも読者に考えさせるような仕組みでもなし。だからと言って盛り上がる謎解きがあるわけでもなし。犯人もすぐわかる。まぁ、これは、犯人はこの人だからーと読者に読みすすませようという作家の作戦なのかもしれないが、トリック同様もりあがるわけでもないので、逆に意気消沈
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北山氏の著作では2冊目、短編集。彼の創造した探偵「音野順の事件簿シリーズ」としてシリーズ化されている。 氏の作風として物理トリックにこだわるところは短編も同じであり、その都度ニヤリとしてしまう。それより今作の大きな特徴は作品の構成そのものにあると思う。 ひきこもりの名探偵音野...
北山氏の著作では2冊目、短編集。彼の創造した探偵「音野順の事件簿シリーズ」としてシリーズ化されている。 氏の作風として物理トリックにこだわるところは短編も同じであり、その都度ニヤリとしてしまう。それより今作の大きな特徴は作品の構成そのものにあると思う。 ひきこもりの名探偵音野順が探偵で、ワトソン役は友人であり彼の手がけた事件を小説にしている作家白瀬である。探偵とワトソン役のキャラ造詣には一工夫あり、過去の類型を見ないよう努力はしているのだろう。まぁ、ラノベ的であり、二人のやりとり、さらに岩飛警部などもからみ、ユーモアの点でも楽しめる。 しかしながら探偵の様式美に徹底的にこだわった作風であることが殊に嬉しく思えた読後感だった。様式美は解説で言及されており、作風を一言で表すなら正鵠を射ている。 事件が起きて不可思議があって、探偵登場、手がかりが発見、探偵の推理完了、一同揃ったところで種あかし、犯人確保、という一連の流れが共通して存在する。そこに氏お得意の物理トリックが絡む。お約束だけど飽きない、「寅さん」の世界がそこにある。お気楽に読めながらもクセになる味が確かにある良品であった。
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音野順可愛いよ、なにこの生き物。ぷるぷる。 ひきこもり探偵といえば、鳥井だったけれど、応援したくなる名探偵音野順! 早く来賓用の椅子を用意してください白瀬さん。 ミステリとして云々はおいといて、鳥井・坂木コンビのような成長物語になるのか、音野が成長するにつれて白瀬が壊れる展...
音野順可愛いよ、なにこの生き物。ぷるぷる。 ひきこもり探偵といえば、鳥井だったけれど、応援したくなる名探偵音野順! 早く来賓用の椅子を用意してください白瀬さん。 ミステリとして云々はおいといて、鳥井・坂木コンビのような成長物語になるのか、音野が成長するにつれて白瀬が壊れる展開だともえる。 白瀬さんちょっとおかしい。
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世界一内気な名探偵? ジャケ買いからずいぶん経っての読了。小説家は金持なのか?ってくらい毎章新しい家具が届く。
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古典的な香りがするライトミステリー。 多少なりとも人が死ぬのに、なんだかほのぼのとした作品です。 さらりと読めるので初心者向けかな? 感動した、とか、あのトリックには度肝を抜かれた、とかはありません。が、時々読み返したくなるようなタイプ。 たまに食べたくなるお茶漬けみたいなも...
古典的な香りがするライトミステリー。 多少なりとも人が死ぬのに、なんだかほのぼのとした作品です。 さらりと読めるので初心者向けかな? 感動した、とか、あのトリックには度肝を抜かれた、とかはありません。が、時々読み返したくなるようなタイプ。 たまに食べたくなるお茶漬けみたいなものでしょうかね。お茶漬けミステリー。
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名探偵 音野順シリーズ。 とっても気弱な名探偵。 一緒に活動している推理作家 白瀬の方が態度としては探偵らしい。 探偵活動に消極的で、暇さえあればドミノをしている…いや、ドミノさえしていれば満足している名探偵。 推理作家である、白瀬は彼を元に小説を書いているので、事件があれば、本人より張り切って捜査へ向かう。 そして、名探偵らしい事務所にしようと彼に何かを買い与えているがどこか空回り。 何個かの事件を含んだ1冊。 どことなく、トリックがユーモアがあって面白いです。
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とっても読みやすい。解説にもあるように、軽く読めるのに古典ものを読んでるみたいな満足感。探偵と助手の関係性も新しいのに古典的。 時間泥棒はトリックもオチも全部読めてしまったけど。
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