寒灯 の商品レビュー
著者お得意の「秋恵と貫多」シリーズが4話。空気を読めない秋恵のちょっとした無神経っぷりが空回りし、貫多の怒りは段階を経て沸点に達する。そして、爆発。しかし、すぐに後悔する貫多。そして土下座謝罪。 基本的にどの短編もこの流れ。安定感のある西村作品の王道だ。マンネリなんだけど、純文...
著者お得意の「秋恵と貫多」シリーズが4話。空気を読めない秋恵のちょっとした無神経っぷりが空回りし、貫多の怒りは段階を経て沸点に達する。そして、爆発。しかし、すぐに後悔する貫多。そして土下座謝罪。 基本的にどの短編もこの流れ。安定感のある西村作品の王道だ。マンネリなんだけど、純文学を思わせる芸術性のあるタイトルと中身のギャップ、そして、貫多が沸点にたどり着くプロセスが抜群におもしろい。
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4つの短編からなる秋恵との日記。表題の「寒灯」は、初めて一緒に過ごす正月に秋恵が貫多に断りも無しに単独帰郷を決めていた事に対する憤りの話。男が嫌いな、女性のこうした無神経さを短編に上手く纏めてあり共感。巻末の「腐泥の果実」は秋恵と別れてから八年後に、当時を想起させる品と出会い、そ...
4つの短編からなる秋恵との日記。表題の「寒灯」は、初めて一緒に過ごす正月に秋恵が貫多に断りも無しに単独帰郷を決めていた事に対する憤りの話。男が嫌いな、女性のこうした無神経さを短編に上手く纏めてあり共感。巻末の「腐泥の果実」は秋恵と別れてから八年後に、当時を想起させる品と出会い、その心情を語る一編。 巻頭の「陰雲晴れぬ」で始まる同棲の開始から巻末の一編までで、短いながらも充実していた初の素人女性との同棲生活が生々しく語られ、当初活き活きしていた二人が次第に淡泊な惰性の日々の果て別れてしまう様には、良く有る話とは言え、やはり刹那さを覚える。
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貫多と秋恵のネタはワンパターンだが、ぜんぜん飽きない。 一番面白かったのが、「肩先に花の香りを残す人」。秋江恵をののしる「貫多節」はここに極まる。
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「ぼく、おまえをずっと大切にするから、今後ともひとつよろしく頼むよ」待望の恋人との同棲生活の始まり。仲睦まじく二人で迎える初めての正月に貫多の期待は高まるが、些細な事柄に癇の虫を刺激され、ついには暴言を吐いてしまう。二人の新生活にあやうく垂れ込める暗雲の行方は―。
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西村賢太作品5冊目を読み終えた。芥川賞受賞作『苦役列車』よりも後に出版されたものなので、話題も比較的新しい。 以前読んだ作品にもちょくちょく登場していた恋人秋恵との同棲生活が話のメインになる。相変わらずの貫多の性癖、嫌いだわ。秋恵もよくこんな奴と付き合って、1年半以上も辛抱したな...
西村賢太作品5冊目を読み終えた。芥川賞受賞作『苦役列車』よりも後に出版されたものなので、話題も比較的新しい。 以前読んだ作品にもちょくちょく登場していた恋人秋恵との同棲生活が話のメインになる。相変わらずの貫多の性癖、嫌いだわ。秋恵もよくこんな奴と付き合って、1年半以上も辛抱したなと思う。でも、男って未練タラタラなんですよ。好きな女が離れていけば、どんな愚か者でもなかなか立ち直れない未練の生き物なんですよ。そんな俺も未練タラタラなタラ男です。「腐泥の果実」では離れていった秋恵への未練タラタラ感が、情けなさと共に何故か共感できてしまう男の性が表現されていて、タラ男の私、読んでいて切なかったですわ。
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北町貫多が30過ぎのころ,唯一同棲した女性との生活が4話集録されています。貫多の幼児性がうまく出ていて面白いです。ついつい貫多に肩入れしてしまいますが,貫多の言ってることはむちゃくちゃなのが逆に気持ち良いです。腐った泥の果実では,秋恵のセリフが秀逸です。
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北町貫多の念願の女性との同棲生活が中心の内容。 これまでの作品の中でもかなり読みやすかった。 それにしても彼ほど後悔がついてまわる人間もいないのではないか。 後悔する様子を見事に描いていると思う。 彼の女性に対する態度は相変わらずにひどいものであると思う。 ただ「腐泥の果実」...
北町貫多の念願の女性との同棲生活が中心の内容。 これまでの作品の中でもかなり読みやすかった。 それにしても彼ほど後悔がついてまわる人間もいないのではないか。 後悔する様子を見事に描いていると思う。 彼の女性に対する態度は相変わらずにひどいものであると思う。 ただ「腐泥の果実」におけるプレゼント諸々の件は、その思考過程としてわからなくないところもある… しかし思うところはあっても彼のような行動は決してとらない。 本作からその顚末を観て絶対に自分はそうならないと思った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とるに足らない痴話喧嘩。ありふれた睦言に由無し言が赤裸に綴られる。いつものように身勝手な爆発が始まり侘びしく哀しい悔恨慙愧に帰結する。4つの短編がいずれもこのワンパターンに終始しているにもかかわらず飽きさせないのは磨き上げられた秀逸な筆力のなせる技。見事というほかない。ただ淡々と流れる何気ない男女の日常風景に夫婦のあり方、他者を思う心を深く見つめ直すこともできた。得体の知れない力に圧倒された。
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芥川賞受賞後、第一作との事で期待は募ったが、うーん。相変わらずに最低な主人公が主に同棲相手に向けて最低な振る舞いを行うといういつもの西村節なんだが、これに収められた短編どれもが、小手先のテクニックで書かれたという印象以上のものを残さなかった。なんか文章が濃ゆくなかった。話もリズミ...
芥川賞受賞後、第一作との事で期待は募ったが、うーん。相変わらずに最低な主人公が主に同棲相手に向けて最低な振る舞いを行うといういつもの西村節なんだが、これに収められた短編どれもが、小手先のテクニックで書かれたという印象以上のものを残さなかった。なんか文章が濃ゆくなかった。話もリズミカルだけど、いささか安易に感じられた。 芥川賞での成功が影響してるのかもしれないが、そこまでは心配してない。俺は、西村賢太の作品は短編集によって、お気に入りとそうでもないものが、2:1ぐらいに分かれるので、今回はたまたま、そうでもないものだったのかなあ、と。 次に期待している。
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やっぱり 西村賢太はいいなぁ…。 読みながら おいおい!とか 分かるぜ!とか ヒド過ぎ!とか ツッコミながら読める。 素晴らしい作家さんです。
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