ミュージック・ブレス・ユー!! の商品レビュー
主人公はパンクロック好きな赤髪の高校生3年生のアザミ。 最初は音楽系の青春小説かと思いきや、ちょっと違った。 音楽好きな主人公が思春期特有の考え方、将来が見えないもどかしさに思い悩む。 明るい青春小説ではなく、ちょっと変わった高校生の内面を描いた青春小説。
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主人公アザミと同じように音楽を聞いていた頃のことを思い出した。ブログでの出会いとか 音楽について語ることとか。 アザミの友達のチユキの 許せないことに対する行動は、妄想はすれど現実には出来ない。あぶなっかしいけど 羨ましい。 アザミが友人とのこの時間がなくなっていくのを心配するよ...
主人公アザミと同じように音楽を聞いていた頃のことを思い出した。ブログでの出会いとか 音楽について語ることとか。 アザミの友達のチユキの 許せないことに対する行動は、妄想はすれど現実には出来ない。あぶなっかしいけど 羨ましい。 アザミが友人とのこの時間がなくなっていくのを心配するように、こういう時代の気持ちはいつの間にか薄れていくけど、じぶんの中に核としてある。ということを、あの頃を思い出すことによって改めて感じた。
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音楽を聴くことが好きな高校3年のアザミ。高校3年生という、ちょっと不思議で独特な時期に、様々な人たちとの出会いや関わりで、自分の中にある色々な思いに改めて気付いていく。自分がどこか周りと違うと感じていながらも、そんな自分を認めている、受け入れている彼女。やはり、何か″好きなこと″...
音楽を聴くことが好きな高校3年のアザミ。高校3年生という、ちょっと不思議で独特な時期に、様々な人たちとの出会いや関わりで、自分の中にある色々な思いに改めて気付いていく。自分がどこか周りと違うと感じていながらも、そんな自分を認めている、受け入れている彼女。やはり、何か″好きなこと″がある人っていうのは強い。「本当に好きな音楽があればずーっと聴いていたらいいと思うよ。好きなものがあるほうがいいよ」。自分が思うこと感じること、大切にしていきたい。
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とにかく音楽を聴くのが好き、それ以外は今のことも将来のことも自分で自分がどうしたいのか分からないという女子高生が主人公。そんな彼女が、友人との交流を通して自分というものの輪郭を手探りで一歩ずつ探っていく話。そのゆっくりとした足取りに共感を覚えた。描かれている友人関係のあり方がどれ...
とにかく音楽を聴くのが好き、それ以外は今のことも将来のことも自分で自分がどうしたいのか分からないという女子高生が主人公。そんな彼女が、友人との交流を通して自分というものの輪郭を手探りで一歩ずつ探っていく話。そのゆっくりとした足取りに共感を覚えた。描かれている友人関係のあり方がどれもとてもよくて、それがこの小説の一番の魅力だと感じた。友人関係の中で自分の思わぬ能力に気づかされたり、逆に足りないものに気づかされたりして見える世界が少しずつ変わる、その素晴らしい瞬間に立ち会わせてくれるという意味でよい小説だと思う。
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今回は社会人小説じゃないので星三つかな〜と思ってたけど、最後の最後にはやっぱり流石の津村さんらしさがあったので星四つ。
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この本に普通の子は出てこない。 生き辛そうな高校生活を音楽でふっと息をしながら過ごしていく主人公。出てくる人がみんな魅力的。辛いとき、読むとわたしも息をする。
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アザミは発達障害があるんだろうけど、ちょくちょく出てくる一方的に音楽に語る場面は、読者も置いてけぼりでついていけた人はあまりいないんじゃないだろうか。 しかし、アザミとチユキ、いいコンビだな〜!こんなにお互いのこと思いやれる相手がいるのが羨ましい。青春です。
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自分が30歳を目前にして、自分とはかけ離れてる青春ものの小説を避ける傾向にあったけど、なんせ好きな作家さん、読まずにいれませんでした。 青春ものなのに、一人一人の人間性に引き込まれ、とても良い読後感です。
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最後まで独特な空気が流れていた。 高校3年生という神経質になる時期の様子が手に取るようにわかって、こっちまで胸が苦しくなったものだ。 あぁアザミ、もっかい読みたい
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冒頭─── みんな出て行ってしまった。閑散としたスタジオの真ん中に置かれたパイプ椅子に座って、アザミは、ひっぱたかれた頬が今ごろひりひりと痛みはじめるのを感じていた。たたかれた当初は何が起こったのかわからなかった。床に落ちたやたらテンプルの太いプラスチックフレームのメガネを拾い上...
冒頭─── みんな出て行ってしまった。閑散としたスタジオの真ん中に置かれたパイプ椅子に座って、アザミは、ひっぱたかれた頬が今ごろひりひりと痛みはじめるのを感じていた。たたかれた当初は何が起こったのかわからなかった。床に落ちたやたらテンプルの太いプラスチックフレームのメガネを拾い上げた時にやっと、あらあたしびんたされたわ、と頭の中の悠長な部分が言った。女の子に殴られたのは初めてだった。さなえちゃんがそういうことをする女の子だとは思わなかった。あの高い声でまくし立てられたら、アザミは心が端から壊死するような気がして、だからそれだけで、自分はすぐに彼女の心持ちに合わせてどんなことでも言ったはずなのに、さなえちゃんはすごい癇癪をたててアザミをひっぱたき、捨て台詞を残して行ってしまった。 「だいたいなんなんよ! その矯正器の色!」 アザミは、携帯電話の画面を「ミラー」というモードにして、イーと歯を噛みあわせ、歯列矯正器をしげしげと眺めた。今年の阪神はどうなんでしょうねえ、という世間話をしていて、気がついたら歯医者の先生はブレースに黒と黄色のゴムをはめてしまっていた。アザミはそれが気に入っており、学校でも家でも、鏡を見るたびににたりと笑ってブレースの確認を怠らなかったし、友達にもうけた。 ─── どうです? 面白いでしょう? これだけ書き出しにインパクトがある小説は、綿矢りさ以外ではめったに出会わなかったので、長々と引用してしまいました。 津村記久子は優れた青春小説の書き手でもある、とどこかの新聞の評者が書いていたが、私も全く同感だ。 この作品は大阪の田舎の高校が舞台。 どちらかと言えば、スクールカーストの底辺部にいる高校三年生の主人公アザミ。 外国の音楽にのめり込み過ぎて、勉強もできず受験などどこ吹く風で、一見、閉塞感を抱き鬱々としているようだが、どこか達観している。 ただし無気力に人生を諦めているわけではなく、真剣な側面も持ち合わせている。 アザミの唯一の友人ともいえるチアキ。 このチアキのキャラが何とも魅力的だ。 相手が男だろうが何だろうが、自分で納得できなければ後先考えずに行動を起こすという独特の正義感が、この物語に強烈な印象を与えている。 暗く陰鬱になりがちな話を、笑って弾け飛ばすような爽快感のあるものに変貌させる。 その他のアザミの周りの人々、アザミを優しく見守る(?)両親をはじめ、トノムラやメイケ君やモチヅキ君。 アヤカちゃんやナツメさん。 それぞれのキャラがくっきりしていて、目に浮かんでくるようだ。 特に同じ歯医者に通い、歯が矯正されればハンサムになって好きな女子に告白できる、と頑なに信じているモチヅキ君の脳天気さは笑いを誘う。 青春時代、特に高校卒業を間近に控えて、将来の自分の姿に思いを馳せるとき、若者は未来への希望と厳しい現実の狭間で揺れ動く。 自分はどうなるのか、何を目指すべきなのか、もやもやとした心で悶々と答えがでないまま、時はどんどん過ぎてゆく。 これもまた“青春”の一側面だ。 この作品は、そんな悩みや苦しさを抱き、もがく若者を淡々とした筆致で見事に描いている。 音楽を、そんな側面を象徴する微妙なエッセンスとして登場させている。 ミュージック・ブレス・ユー!! 一般的な、明るく感動的な印象を抱く青春物語ではないけれど、ちょっと違った雰囲気を持った青春小説の傑作だと思う。 お薦めです。
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