ジミ・ヘンドリックス の商品レビュー
一冊一人物を特集した KAWADE夢ムックのシリーズ中のひとつ、 ギターの革命児ジミ・ヘンドリックスの特集版。 図らずして死の直前インタビューとなった キース・オルサム氏によるオリジナル全文の訳文を掲載している。 貴重な本インタビューを目玉に 評論からディスコグラフィー、バイオグ...
一冊一人物を特集した KAWADE夢ムックのシリーズ中のひとつ、 ギターの革命児ジミ・ヘンドリックスの特集版。 図らずして死の直前インタビューとなった キース・オルサム氏によるオリジナル全文の訳文を掲載している。 貴重な本インタビューを目玉に 評論からディスコグラフィー、バイオグラフィー 奏法に至るまで、バラエティー豊かに盛り込んでいる サイケでフラワーでディギットな一冊である。 目玉のインタビューはしかし当然の事乍 ジミの当時現在の心境が綴られるのみで そこに数日後の死を予期させるものは無く 淡々として、通常見られるインタビューから 大きく変化したものを期待すると裏切られる。 しかし、ジミのインタビュー自体貴重なものには 変わりないので目を通しておきたい。 ジミに寄せる文責で必読は ピーター・バラカン氏による当時の回想である。 日本在住でビートルズのコンサートを見たという人は 時にお会いすることもあるが、ジミのギグとなると皆無である。 英国のジミのその将にデビュー時当地におき、 氏はロック好きで15〜16歳の多感な時期にあり、 リアル体験としてかなりの衝撃を受け そのイメージは今以て鮮烈に語られる。 貴重な歴史の証言を私達は日本語ネイティブで 例えばロンドン・マーキークラブとのキャバ比較に 渋谷のクラブ・クワトロ参照すると云う様な表現を享受出来る。 個人的にディランも逆カバーの見張り塔の絶賛や、 リトルウイングのイントロ・コピーなど嬉しい箇所を突いてくれる。 他にも中野重夫氏によるものが ジミを実際にコピーしている事もあって マニアックで所謂「濃く」て興を惹く。 ただ他の評論的文責はウッドストックに於ける ジミの観客数が怪しかったり、非道く空想的だったり 人口に膾炙している話を只理屈っぽく云っただけだったり、 出来の悪い三題話の様なものだったりで 読む必要はないかもしれない。 それよりも読んで面白いのが 「サウンド・周辺の人々」の何篇かである。 飛び入りのクラプトンを紹介するサンタナの辞 「ジミに愛されたミュージシャン!」を其の儘 タイトルに使用した加藤正人氏による一文抔は 例えばジミによるクラプトンのカバーと クラプトンによるジミのカバーのタイムラグが 今更乍両人のパーソナリティに合わせて首肯出来る抔 イベントの時系列が読み取り易く、 勿論バラカン氏の様にジミを直接ではないが 筆者の実体験エピソードが盛り込まれ 読んでおきたい一篇となっている。 彼の死から三十数年、権利も音源も整理され、 以前幻と云われたものも比較的容易に手に入るようになった。 死後の曖昧なリリースに飽き飽きしているオールドファンは 本書の整理された「Works」を見て 今購入可能な音源に垂涎するも良し、 ジミを初めて聴かれる方は、本書を大船とまでは行かないが 水先案内とするのも良いかもしれない。 現在入手可能ということで 最近ジミに疎遠なオールドファンにひとつ、 ダガー・レコードと云うレーベルはレア音源が 通販のみであるが入手可能ということで チェックの必要があるかもしれない。 また私も系列の情報に疎遠にて チャス・チャンドラーやノエル・レディング、 アル・ヘンドリクスの訃報を知らずにいたが、 ここに哀悼の意を表したい。 私はと云えば本書でもP169に紹介されている DVD「エクスペリエンス」を「ヒア・マイ・トレイン・ア・カミン」の アコースティック・バージョンを収録ということで ゼマティス12弦より紡ぎ出される リアル・ブルースの魅力に抗すべくもなく 既にビデオを所有しているにも関わらず 店頭で見つけて即購入してしまった。 いずれ当BLOGにて紹介出来ればしてみたい。 この様な書籍を見るにつけても改めて ジミはどう扱ってもジミで、強烈な一つのオリジナルで、 クローシャンヘッドが引っ繰り返っているだけでジミなのだ。 ジミについて書かれることに何一つ新しいことはないが いつもジミの音は新しいことこそ ジミ・ヘンドリクスの真骨頂と云えるかもしれない。
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