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青い空 の商品レビュー

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2024/05/08

 本書は、チェコの画家、ヨゼフ=チャペック(1887~1945年)が亡くなって3年後の1948年に、彼がのこした多くの絵の中から子どもの情景を描いたパステル画15点を選び、それにチェコの代表的な詩人、フランチシェク=フルビーン(1910~1971年)の詩を添えて発行されたものです...

 本書は、チェコの画家、ヨゼフ=チャペック(1887~1945年)が亡くなって3年後の1948年に、彼がのこした多くの絵の中から子どもの情景を描いたパステル画15点を選び、それにチェコの代表的な詩人、フランチシェク=フルビーン(1910~1971年)の詩を添えて発行されたものです。  カテゴリ的には詩画集になると思われるが、読んでみて全くそう感じさせない、その分かりやすい親しみやすさは、子どもたちとの距離を縮まらせる、ヨゼフのパステル画と、フルビーンの子ども心をそのまま歌ったような、夢いっぱいの微笑ましさがそうさせるのだと感じられ、まるで絵本と呼んでも差し支えない、そんな親しみやすさには誰の心も傷付けない、ただ、どこまでも牧歌的で平和な様子が、このまま永遠と続いていくような希望に満ち溢れている。  また、ヨゼフの表情のない子どもの絵は、いわさきちひろさんを思い浮かべるような、却って、それがあるよりも感情が色鮮やかに目に浮かぶようで、そのちょっとした体の動きだけでも、活き活きとした様子がありありと分かる、そんな楽しい雰囲気は、絵の中の子どもたちが複数人描かれていて、ひとりぼっちの絵が全く無いことからも肯ける、ヨゼフの優しい人柄もあるようで、それはパステル画とはまた趣が異なる、手描き風のラフな絵からも感じられた、彼の持つ温かみなのだろう。  そして、そんなヨゼフの絵に寄り添った、フルビーンの詩の微笑ましさを伝えるために、タイトルにもなっている「青い空」を掲載したい。 「青い空」 春 小鳥たちが たのしいうたごえとともに 青空をはこんでくる 人びとの上に 大地の上に わたしは 小鳥たちといっしょになって 大空をとびまわる 空には あふれるばかりの青があって 子どもたちみんなにくばっても くばりきれないほどだ  読んでみて、詩をイメージさせるような堅苦しさや高尚さというよりは、日常に於ける、子どもたちの心に描く楽しさを分かりやすく言葉にしているような印象を抱き、そこに私は、まるで子どもたち自身がこうだったらいいなという夢や希望を乗せているような、そんな思いを『青い空』に込めているのだなと感じ、それは、今の世の中では既にありふれたものなのかもしれないが、ありふれたものであるからこそ、決してそれの無い社会にしてはいけない、そんなささやかでも、誰もが楽しく笑って過ごせるような社会を、ヨゼフは願っていたのである。  そして、そんな願いは、晩年、彼がナチスドイツの収容所を転々とした末に亡くなりながらも、そこで書き残した詩に切々と込められており、それを読んでから改めて彼の絵を見ると、確かに青色が多く使われているように思われた、そこには戦火で染められた悲しい空の色ではない、普段通りの青空に平和への思いも重ね合わせた、彼の夢見た世界への眼差しもきっとあったのだろうと、私には思われたのであった。 あの 大空の青 そんな青い絵を わたしはかきたい いつも喜びと幸せにみちていた ふるさとの家から立ち登る うす青い煙 そして 子どもたちのあそびのなかの青 わすれな草の花のように青く つぐみのさえずりのように青く あやめやつりがね草が 花開くとき たくさんの青いうたが 生まれ わたしの愛する人のリボンも青かった…          ヨゼフ=チャペック          1944年   ──ザクセンハウゼンの収容所にて

Posted byブクログ

2018/02/25
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※このレビューにはネタバレを含みます

素朴で平和で幸福な、田舎と自然がひろがり、その美しさを感じるこころの豊かさを、画と詩とで語りかける絵本。その裏には、それを切望する強い気持ちも潜んでいるように感じた。アウシュヴィッツに収容されていた画家さんだからこその、絵だと思う。

Posted byブクログ