詩集 草の家 の商品レビュー
編集中 もとの作品は縦書きです。スマホでできる限度で表示しています。 いのり 火葬場の焼却炉の扉が バーンと大きな音をたてて あなたは重く閉ざされた扉の向こうに 行ってしまったけれど あなたはここにいる ろうせきのようなもろいしろい灰になって あなたは小さくわたしの胸に抱...
編集中 もとの作品は縦書きです。スマホでできる限度で表示しています。 いのり 火葬場の焼却炉の扉が バーンと大きな音をたてて あなたは重く閉ざされた扉の向こうに 行ってしまったけれど あなたはここにいる ろうせきのようなもろいしろい灰になって あなたは小さくわたしの胸に抱かれたけれど あなたはここにいる わたしを呼んだあなたの声は いまもわたしの耳元 わたしを抱いたあなたの腕は いまも私を支える あなたと過ごした浅草の街のざわめき あなたと過ごした浅草の安ネオンや祭り 職と食を求めて浅草に流れ込んだひとびと あなたの愛した流行歌 時代のざわめきとひとびとが 通り雨のように去り 流行歌が記憶のフィルムにしか 存在しなくなったとき あなたの時代も終わり あなたは静かで小さな死を選んだ 雨が止んで 名もなき草の花が静かに咲いて 光がそそぐとき あなたはわたしに帰ってくる わたしがあなたを思い出すとき あなたの存在はこんなに近くにある こんなにもわたしの心身をふるわせている わたしの胸があなたの居場所 私のこれからがあなたのこれからの視界 あなたと旅した海が凪いで光を抱くとき あなたはわたしに帰ってくる
Posted by
- 1