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蝉声 の商品レビュー

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2024/08/08

河野裕子さんの歌集ですね。 河野裕子さん(1946ー2010・8・12)熊本県生まれ。 歌人、宮柊二さんに師事する。今月は亡くなられた祥月命日になります。 乳ガンの治療をされながら詠まれた歌です。河野裕子さんの最終歌集です。ご主人の歌人の永田和宏さん、長男の歌人の永田淳さん、長女...

河野裕子さんの歌集ですね。 河野裕子さん(1946ー2010・8・12)熊本県生まれ。 歌人、宮柊二さんに師事する。今月は亡くなられた祥月命日になります。 乳ガンの治療をされながら詠まれた歌です。河野裕子さんの最終歌集です。ご主人の歌人の永田和宏さん、長男の歌人の永田淳さん、長女の歌人の永田紅さんが、河野裕子さんが書き留めた原稿用紙や手帳から、拾い集めた遺稿集になります。亡くなる最後の日まで歌を作り続けられたそうです。なかには、口述筆記で書き留めた歌もあるそうです。字が読み取れず諦めた歌もあるようで、あとがきで悔やまれておられました。  傘さして誰にも言わず来たけれど    蛍袋咲く道の辺にゐる  川上の水は小さく光りをり    そこまで歩かう日の暮れぬうち  白梅に光さし添ひすぎゆきし    歳月の中にも咲ける白梅  耳かきをこよこよさせて、    いつだつけあの月夜の道はとはるかに思ふ  はるばるとわれに来たりし南部風鈴    露けき月夜の風に鳴り出づ  一日中眠りてをれり目覚めれば    蟬声(せんせい)も娘(こ)も影のやうなり  めざめては今日とぞ思う九時半の    朝のひかりに寄せくるひぐらし  さびしさよこのひと夏を越しうるか    ヒアフギ水仙の朱紅に咲けり  病院のカーテンしばらく見てをれば    短い衣装の天使現はる  雨?と問へば蟬声(せんせい)よと紅は立ちて言ふ    ひるがほの花  やはり蟬声(せんせい)よとわれはおもふ    湿りて咲きゐるひるがほの花  あなたらの気持ちがこんなにわかるのに    言ひ残すことの何ぞ少なき  さみしくてあたたかかりきこの世にて    会ひ得しことを幸せと思ふ  手をのべてあなたとあなたに触れたきに    息か足りないこの世の息が  瑞々しい言葉で心情をのびやかに表現されています。死を前にして、一歩も引かず最後の日まで、短歌を詠まれ続けられた、河野裕子さんの命の歌ですね。ご家族が、しっかりと遺志を受け止められて結実された想いが伝わってきます。

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2019/08/15

2010年8月12日に亡くなった河野裕子の遺歌集、最期の日まで歌を詠み続けた歌人のありように感動を覚える。八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蟬の声降る/手をのべてあなたとあなたにふれたきに息が足りないこの世の息が

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2019/02/24

乳がんに冒され、死に向かいゆく中で詠まれた歌を集めた遺歌集。歌集などほとんど読んだことがなく、とても星はつけられないが、この一冊を手にとって良かったと思う。 ままならない自らの身体。来年見ることはないだろう、と思いながら眺める季節の草花。何気ない日常の一コマ。研ぎ澄まされた感性...

乳がんに冒され、死に向かいゆく中で詠まれた歌を集めた遺歌集。歌集などほとんど読んだことがなく、とても星はつけられないが、この一冊を手にとって良かったと思う。 ままならない自らの身体。来年見ることはないだろう、と思いながら眺める季節の草花。何気ない日常の一コマ。研ぎ澄まされた感性で見つめている。 家族を残して逝く無念さや、病魔と一人きりで闘う孤独感が色濃く表れていて胸を締め付けられる。夫への愛情が滲み出た歌も多く、ただただ切ない。 終盤は徐々に力無く弱っていく様が読み手にも伝わるほどだったが、亡くなる直前になると一転して歌を遺したいという強い意志が溢れ出す。そしてこの世に生きた幸せと愛を詠んだ翌日、逝くのである。 死ぬまで情熱の炎を絶やさなかった一人の女性の生き様に心動かされた。 「手をのべてあなたとあなたにふれたきに息が足りないこの世の息が」

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2011/12/18

私の好きな歌人のひとり、河野裕子さんの遺歌集。 やはり歌のほぼすべてが死を意識したものになっている。 死を意識した人はずっとこういうことを考えているのかと思うととても寂しくなる。 死を見つめながらも素直にその感情を綴った歌集は、最期まで少しでも多くの言葉を残そうとする河野さんの...

私の好きな歌人のひとり、河野裕子さんの遺歌集。 やはり歌のほぼすべてが死を意識したものになっている。 死を意識した人はずっとこういうことを考えているのかと思うととても寂しくなる。 死を見つめながらも素直にその感情を綴った歌集は、最期まで少しでも多くの言葉を残そうとする河野さんの生き方を表していると思う。 とても良い本だけど、少し余裕のあるときに読まないと辛いかもしれない。

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2011/12/15

病に伏せ亡くなられた河野さんの遺稿をご家族が歌集として編まれた、最終歌集。 見たもの、感じたものをまっすぐに表現する方だったがゆえに、闘病の過程から死に至るその日までの一日、一刻が克明に伝わってくる凄絶さに、喉が詰まる。 ときおり歌に現れる、お孫さんや、お嬢さんの結婚に際し、注げ...

病に伏せ亡くなられた河野さんの遺稿をご家族が歌集として編まれた、最終歌集。 見たもの、感じたものをまっすぐに表現する方だったがゆえに、闘病の過程から死に至るその日までの一日、一刻が克明に伝わってくる凄絶さに、喉が詰まる。 ときおり歌に現れる、お孫さんや、お嬢さんの結婚に際し、注げる愛情を歌ったそのうつくしさも眩しい。 「わたくしはわたくしの歌のために生きたかり作れる筈の歌が疼きて呻く」 河野裕子というひとは、病めるときも歌人としてあろうとしたのではなく、生きるということは歌うことだったのだと、思った。 鬼気迫るその姿はでも真摯で、とても人間らしい。かくありたい。 [liblar転記]いただきもの。

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2011/09/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

歌人、河野裕子氏の遺作集。がんに冒され、既に自分の死期を知りながら生きていくという肉体的にも精神的にも厳しい辛い状態の中、最期まで歌を詠み続けた人。今まで、いろいろな形で死期迫った人々の物語、小説、ドキュメントなどに触れてきたが、これほどリアルで辛く心に沁み入ってきた作品は初めてだ。短い三十一文字に込められた生、家族、自分の状態等心に響く。歌の力というものは大きいのかと驚かされる。私と10ほどしか年齢も違わず、発病したのは6年ほど前、人の命の儚さと強さを同時に感じる。体は自分の思い通りに動かせず、呼吸さえ自分でままならなくなっても、意識だけははっきりしている。これほどつらいことはあろうか。妻として母として家族に対する愛情を溢れさせながら、家族を残していく辛さ。また家族全員がとても優しいということも感じられる歌集だ。

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2011/09/07

「短歌を詠む」ことがそのまま、「生きる」ことだったんだな、と。 ことばのちからを、信じさせてくれる。

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2011/08/03

先月でた著者の遺作歌集。まさに死の直前まで、歌とともに生きた​ことがよくわかる。7/10の朝日新聞読書欄で週間ベストセラー​(八重洲書店)にも入っていて、驚きました。

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2011/08/07

昨年八月十二日になくなった、歌人の河野裕子さんの遺歌集。 頁を繰る毎に彼女に死が迫る様を見ているかのように泣く

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