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マーラー の商品レビュー

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2011/10/16

今年没後百周年を迎えた作曲家グスタフ・マーラー。その​生涯については、妻アルマの回想録が重要な基礎資料とさ​れてきましたが、かつて音楽評論家の吉田秀和さんも指摘​されていたように、その記述内容については、かなりアル​マの都合で事実関係など改変されていることが問題視され​るようにな...

今年没後百周年を迎えた作曲家グスタフ・マーラー。その​生涯については、妻アルマの回想録が重要な基礎資料とさ​れてきましたが、かつて音楽評論家の吉田秀和さんも指摘​されていたように、その記述内容については、かなりアル​マの都合で事実関係など改変されていることが問題視され​るようになっていました。 本書は綿密な資料の収集・吟味を通じた研究の成果を踏ま​えて、アルマによってつくりだされたマーラー像の再構築​を分かりやすく伝えようとした労作です。 同じようなことは、分野が違いますが、マーラーとほぼ同世代の社会学者マックス・ウェーバーの場合にも、妻マ​リアンネの名高い評伝の影響から自由なウェーバー像がな​かなか描けなかったということがあったことが思い出され​ます。 時々メディアなどで聞かれる「長年連れ添った夫婦でなけ​れば分からない…」ということの対極に、「夫婦だからこ​そ、分からない」という面もある、というのが実際ではな​いのかな、と思います。 文学作品では、ジェームズ・ジョイス『ダブリン市民』の​最後の「死者たち」や、アルトゥール・シュニッツラー『​夢小説』(映画『アイズ・ワイド・シャット』の原作)な​どを読むときに、そうしたことを考えさせられます。もち​ろん、お互いできる限り理解しよう、と努力した上で、と​いうことですが。

Posted byブクログ