真理の探究 抜粋と注解 の商品レビュー
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ナイチンゲールと言えば、いうまでもなく看護の分野での偉人という評価が定着しておりますし、そのことを否定しようとは思いませんが、その光り輝く看板に埋もれた、そして謎に包まれた名著が『真理の探究』でしょう。 元々ごく数部が擦られ配布された、私家版の覚書・メモのようなものですが、その中から、重要な部分を抜粋し編集し直したものが『真理の探究』になります。原著の約半分の分量になっておりますが、彼女の「観察と経験」に裏打ちされた宗教哲学(と表現していいでしょう)には度肝を抜かれます。 そして主として書かれたのが30代の頃といわれることにも注目すべきでしょう。彼女が既存教会組織への批判とその超克を探究したものですが、真理(神の法則)の前で正直になることを厳粛に教えてくれます。 しかし単なる既存の体制への批判となっていない点にも注目すべき。現存体制への批判は時として、為にする批判へと傾きがちですが、峻厳にその易きへのおもねりをさけながら、真理をめざし、真理に生きていくスケッチには眼が開かれます。 ちょうどユニテリアン研究の一環で、この本を手にとったわけですが、ユニテリアン以上にユニテリアンであると同時に、決してユニテリアンでもないことがその言葉から理解できます。普遍の法則・真理はたんなる法則・真理でもないし、なにがしかに還元されるわけでもありません。 そのへんの経緯を読みやすい言葉で紹介してくれる好著といってよいでしょう。ただ読みやすいとはいっても難しい本の類にカテゴライズされることは否定しませんし、キリスト教や聖書の知識は必要不可欠です(念のため)。 しかし、特殊個別から出発して特殊個別の権威を批判し、しかしながら同時にちゅうぶらりんの普遍主義にかたむくわけでもないその絶妙な歩みにはホント驚愕させられてしまうというものです。 なかなか言葉になりませんし、本棚のどこかでうもれているのですぐにとりだせないのですけど、最初によんだとき、そういうインプレッションをいだいた一冊です。 そしてこれが書斎の学者やひとり黙想する修道僧がまとめたものでもないことに注目したいとは思います。これは大事なところでしょう。ながくなりましてすいません。 くどいですが、このへんがユニテリアンでも超絶主義者と呼ばれたエマソンとかそのへんともまた違うところなんだとは思います。そして女性の宗教哲学には一種独特なもの(それは善さですよ)があることは確かですね。
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