北原白秋 の商品レビュー
君かへす朝の鋪石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ 白南風よ光葉(てりは)の野薔薇過ぎにけり かはづのこえも田にしめりつつ
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白秋の歌とその生涯がざっくりと見渡せるつくりが、とてもよかった。 取り上げられている短歌も30首とちょうどよく(本文中に多数引用されてもいるが)、白秋の歩んだ人生にも、客観的な視線を崩さず、かといって無味乾燥な説明をしているわけでもない、一定の距離感と情感を持った解説に好感を持っ...
白秋の歌とその生涯がざっくりと見渡せるつくりが、とてもよかった。 取り上げられている短歌も30首とちょうどよく(本文中に多数引用されてもいるが)、白秋の歩んだ人生にも、客観的な視線を崩さず、かといって無味乾燥な説明をしているわけでもない、一定の距離感と情感を持った解説に好感を持った。 私は詩が苦手なので、北原白秋も詩人・童謡詩人としてよりは、歌人としての親しみが強い。さらに、自身が福岡育ちで、柳川という土地の風情もとても好きなので、なんとなく地元民としての愛着も感じている。 そんな北原白秋の印象を、私はこれまで「洗練」「異国趣味」「ロマンチック」なものと思っていた。これはおそらく、主に彼の初期の短歌に新鮮味を感じ、それに心を動かされた思いが強かったからだろう。特に、有名な「君かへす朝の舗石さくさくと~」の歌には、読んだときにふっと自分の中で時間が止まったような気さえしたものだ。 それだけに、この本を読んで、白秋が持つあまりの人間臭さに驚いた。 結局はお坊ちゃんなのね、と言ってしまえばそれまでだが、それくらい、白秋の生き方に「幼さ」のようなものを感じたことは事実だ。 (だからこそ、童謡詩人として白秋は大成したのだというのも短絡的な見方かなと思うが、でもそれがしっくり来るなぁ、とも思う) この本でざっくり白秋の変遷を追っただけなのでなんとも言えないが、私は初期の白秋作品(『桐の花』あたり)が好きなようだ。 歳を取ったらまた違うかもしれないが、今はまだ(?)ロマンチックな歌に憧れる。
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