建築・文化論集 装飾と犯罪 の商品レビュー
著者のアドルフ・ロースは20世紀初頭のウィーンで活躍した建築家であり、セセッションやル・コルビュジエと関連付けて考えられることが多い建築家である。前者に関してはインターナショナル・スタイルへの変遷過程を中心に記す普遍的近代建築史、後者に関してはビアトリス・コロミーナによる『マスメ...
著者のアドルフ・ロースは20世紀初頭のウィーンで活躍した建築家であり、セセッションやル・コルビュジエと関連付けて考えられることが多い建築家である。前者に関してはインターナショナル・スタイルへの変遷過程を中心に記す普遍的近代建築史、後者に関してはビアトリス・コロミーナによる『マスメディアとしての近代建築』などが挙げられる。これらとは別に本書を読んで思うところは、文章の勢いがとてもコルビュジエとよく似ていること。 本書は建築論・文化論集である。ひとつの論を展開していくのでない。身辺や時事ネタから、すべてをタイトルの示すところの意味へ収斂していく。このような構成もさることながら、めんどくさい文体、つまり冗長であり妙に抽象的で曖昧な言語で喋りながら、主張としては極度に独断的な点も、非常にコルビュジエ的だなぁと思う。圧倒的に説明が足りないだろと感じる箇所がいくつもあって、読みづらいと感じる。 いわゆる建築家的な文章とはこういう文章を指す。建築を学ぶうえで読むべき建築家の本がこんな本だらけだから、建築の本はつまらない、と思われるのだろうか。実際、それは、ただしい。そう、僕なんかは思ってしまうのだが、どうだろう。
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