共生細菌の世界 の商品レビュー
牛やシロアリは腹の中に共生細菌がいないと食べ物をエネルギーに変えられない。消化器官だけでなく、細胞レベルで同居している細菌も多く、ある種の昆虫は特定の細菌に感染していないと生きていけないんだそうだ。ゴキブリがしぶといのも共生細菌が力を貸しているからだという。 著者は昆虫の共生細菌...
牛やシロアリは腹の中に共生細菌がいないと食べ物をエネルギーに変えられない。消化器官だけでなく、細胞レベルで同居している細菌も多く、ある種の昆虫は特定の細菌に感染していないと生きていけないんだそうだ。ゴキブリがしぶといのも共生細菌が力を貸しているからだという。 著者は昆虫の共生細菌を研究している人で、本書も昆虫の話が中心だ。ある種の蝶では、共生細菌が自らの垂直感染(親から子への感染)の確率を高めるために、宿主を性転換!させてしまうのだという。 生き物の身体の中にいる微生物と、宿主たる生き物の関係は、これから研究が進む分野だろう。人間も腹の中に数キロの共生細菌を抱えているそうだが、連中が何をしているのかはいまいちわかっていない。邪魔ばかりしているのなら、進化の過程で一掃されても不思議はないのに、そうではないということは、連中がいないと困ることがあるのではないだろうか? 本書は科学書としてはちょっと変わった部類で、著者(まだ若い女性のようだ)が何を不思議に思い、そのためにどんな実験を設計して、その結果がどうだったか(仮説が否定されることもある)、それをどう解釈したか、ということが、順を追って書いてある。結論だけではなく、研究者の仕事をトレースできて、面白い。途中で脱線して、共生細菌関係ないプチ自伝みたいな章もあるけれど、それもご愛嬌というところか。あとがきによると、経験の短い著者には、ほかの研究者のような一般読者の興味を引く面白いエピソードが少なく、その代わりに自分のことを書いてみたそうだ。著者は自分のことを変わり者だと思っているらしいが、特定の分野で業績を残すひとは多かれ少なかれ「普通ではないところ」があるのだろうと思う。自分が変わり者だと思っている人は読んでみるといいかもしれない。
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「好き」の力はすごい! と思わされた本。 とにかく虫好きの著者。 幼少から継続して身のまわりの虫たち(ときにはヒミズとかカラスとか)を観察し続けたことが、現在の研究につながる。 実験室の中だけで完結する科学とは対照的なフィールド研究の魅力が伝わってきた。
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