ナイト・ガーデニング の商品レビュー
63歳の造園家と61歳の脳梗塞の後遺症が残る女性との儚くせつない大人の恋の物語。 まず、この淡いピンクの控えめだが美しい表紙のカバー写真に惹かれた。 本を開くとボタニカルアートの下絵のようなスケッチ。 庭師として成功し、会社も立ち上げたアジア的な庭を造園するのが得意なトリス...
63歳の造園家と61歳の脳梗塞の後遺症が残る女性との儚くせつない大人の恋の物語。 まず、この淡いピンクの控えめだが美しい表紙のカバー写真に惹かれた。 本を開くとボタニカルアートの下絵のようなスケッチ。 庭師として成功し、会社も立ち上げたアジア的な庭を造園するのが得意なトリスタンは、娘をふたりもうけるも離婚。 娘たちも独立し、今は仕事で世界各地の庭の造園に携わっている。 ある時、高級住宅街の一軒の家の造園を頼まれるが、隣家の車椅子の女性の存在に気づく。 病後、運動機能回復のリハビリ中の61歳の彼女は、今、目の前にある決められたメニューのしなければならないことをこなしている日々だが、彼女と同じように瀕死の庭の植物たちに囲まれ人生を生きていた。 隣家を隔てる塀の穴ごしに出会ったふたりは、月の輝く夜の庭で、植物たちを生き返らせる努力をし、ふたりの庭を作り上げようとする。 自然に自然のなかで結ばれるふたり。 それが、老境にさしかかった年齢であろうが、彼女の半身に多少麻痺が残っていようがなんなのだろう。 廃墟のような庭は、トリスタンとマギーの手で命を与えられ、彼らも植物とともに、生きている確かさを感じていくのだった。 『マディソン郡の橋』の雰囲気をたたえると言われる本書は、短い期間の大人の男女の恋愛小説である。 各章に引用されている造園関係の書物からの引用は、ふたりの物語を高める相乗効果を持っており、植物への愛情と、男女の愛情、どちらも至純の愛の聖性に気づかされる思いがする。 日本の造園を精神を高く評価してくれている作者であるらしく、庭のことが多く語られているにもかかわらず、日本人の私は、まったく違和感を感じない。 作者のE・L・スワンは、児童書や絵本を数多く著し評価を得ているキャスリン・ラスキーの別名で、本書は、児童文学分野以外の初の作品となる。
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