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近代性の構造 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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2019/06/11

1968年のパリとプラハで起こった資本主義と社会主義の双方に反対する市民の運動には、象徴的な意味があったと著者は主張します。資本主義と社会主義は対立するイデオロギーと考えられていましたが、世界史的な観点から見ると、両者はともに「近代性」の精神的構造に基づいていると著者はいいます。...

1968年のパリとプラハで起こった資本主義と社会主義の双方に反対する市民の運動には、象徴的な意味があったと著者は主張します。資本主義と社会主義は対立するイデオロギーと考えられていましたが、世界史的な観点から見ると、両者はともに「近代性」の精神的構造に基づいていると著者はいいます。1968年の事件は、そうした「近代性」への懐疑が噴出した、象徴的な出来事だとみなされることになります。 本書では、「近代性」の精神的構造とその問題が包括的に論じられています。まず、「近代性の根源」とされる近代的時間構造がとりあげられ、円環的時間が支配する近代以前には、人びとは伝統にしたがって日々の営みをおこなっていたのに対し、近代の意識を支配するのは、直線的時間の枠組みだと述べられます。近代においては、人びとはたえず未来を先取りし、未来に向けての「企て」をおこないます。こうした精神が個々人に内在化されるとき、ウェーバーのいう「労働のエートス」が人々の内に根づくことになったと著者は主張します。 さらに著者は、近代における機械の誕生に、「作る」ことによって自然を征服する制作的理性の成立を見ようとしています。機械論的発想は、個人主義とそれに基づく近代市民社会の根底にも認められるものです。しかし近代においては、人びとは同質的な個人であることが求められ、そのために異質的なものを排除する動きも生じることになります。二十世紀が生み出した数々の悲劇は、こうした近代的精神構造が生み出した病と考えられることになります。 本書のねらいは、近代の精神構造を大枠でとらえようとするものだといってよいでしょう。著者が論じてきたさまざまな問題を整理して、「近代」という大きな問題圏の中に位置づけた本だということができるように思います。

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2019/01/18

本書は、タイトルにある”近代性の構造”を、「時間論」「機械論」「自己規律論」の三点から批判的に検討。西洋近代のさまざまな思想のなかから、そのエッセンスを抽出していく分析は、各思想家の多面性を描き出していて興味深い。 1968年を転換点として今日まで、いわゆる近代への批判が展開さ...

本書は、タイトルにある”近代性の構造”を、「時間論」「機械論」「自己規律論」の三点から批判的に検討。西洋近代のさまざまな思想のなかから、そのエッセンスを抽出していく分析は、各思想家の多面性を描き出していて興味深い。 1968年を転換点として今日まで、いわゆる近代への批判が展開されてきたが、いまだ乗り越えられない近代性のうちに留まっているように思う。一方で、結論部で著者がしめす「試みの精神」の今日のありようを、しっかりとらえていく必要がある。そうでないと、”絶望しか残らない”。 人(びと)が現実に存在するという事実がもつ根源的な”暴力”による「排除の構造」に対して、「あえて異者たれ」という呼びかけに勇気をもって答えたい。 巻末の思想家紹介やブックガイドも秀逸。

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2011/08/13

面白かった。近代を体系的網羅的に把握できた。時間論が興味深かった。いやはやまだまだ勉強不足だと痛感。。

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2012/05/27

近代人 特徴 時間感覚        自己規律        機械信仰 近代の現代への移行 近代論

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2011/01/15

石原千秋氏推薦して曰く、「時間感覚や自己規律や機械信仰といった近代人特有の心性を分析しながら、近代が現代(脱近代)に移行するその時をみごとに論じた。近代論の白眉と言える。」(『教養としての大学受験国語』063頁)

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2009/10/12

資本主義と社会主義。 大きな”対立”する問題だとばかり思い込んでた私に、一撃を与えてくれた一冊。 「近代とは何か」という問題意識は、おそらくこれからも強く持ち続けることになるような気がする。

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2009/10/04

「近代」という時代の本質について、この本ほど分かりやすく解説した本は少ないと思う。いわゆる今村哲学の入門書として最適な書。

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