一瞬と永遠と の商品レビュー
萩尾望都の本はマンガ以外では『思い出を切りぬくとき』を前に読んだ。『ガラスの家族』をオススメしてくれた元同僚さんは、私はこれはちょっと…と言ってたけど、読んでみたくて借りてきた。収録されているのは、もう30年あまり前の文章から最近のものまで、本の解説やエッセイ。 小学校5・6...
萩尾望都の本はマンガ以外では『思い出を切りぬくとき』を前に読んだ。『ガラスの家族』をオススメしてくれた元同僚さんは、私はこれはちょっと…と言ってたけど、読んでみたくて借りてきた。収録されているのは、もう30年あまり前の文章から最近のものまで、本の解説やエッセイ。 小学校5・6年のときの担任・高尾先生のことを書いた「先生の住所録」がよかった。鎌倉に行ったとき、突然、小学校のときに高尾先生から受けた授業を思い出して、先生に手紙を書く。返事をいただいた萩尾望都は、お会いしたいと思いながら、両親との間にこだわりがあって、なかなか九州には帰らなかった。そして、いつか先生に会いにいこうと思いながら出した年賀状の返礼が奥様から届いて、先生が亡くなられたことを知る。 もと同級生と一緒に先生のお宅を訪れて、大学ノートを二冊貼り合わせてつくってある、使い込んだ古い先生の住所録を見せてもらう。その晩は実家に泊まって、「こんなことでもなければ私はまだ家に帰ることはなかったのだなと思うと、最後まで先生にお世話をかけてしまった気がした」という萩尾。ニコニコしたお仏壇の写真のお顔を思い出して泣けてくる。 私にも、ときどき便りをする、かつての先生が何人かいるが、亡くなられて、もう便りを出せなくなった先生も何人かいる。それでも、ふと、ああ今、先生に手紙を書きたいと思うことがある。 ▼初めての風景が見慣れたものになる前に、初めて聞く音楽が耳慣れたものになる前に、出会いの感動はしみしみ身体にしみこんで、やがてそれは心臓の近くで結晶になる。思い出すということは、その結晶を思い出すということだから、今見るナナカマドより記憶の中のナナカマドの方がもっと美しかったりする。やがてナナカマドになれると。(p.30、「地球の半分の雪」) ▼都会では、デパートではお金がなきゃいけない。学校では、頭が良くなきゃいけない。 セレブな場所ではセンスがよくなきゃ、いけない。自分で自分を締め付けて生きている。 でも、アフリカに来て、動物を見る。毎日見る。ホテルに泊まっていても、サファリーカーに乗ってはいても、草原と風が、皮膚から身体に染みていく。 私は空。私は風。私は大地。私は生き物。同じ生き物。許された、生き物。(p.35、「私は生き物。同じ生き物。」) (10/11了)
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大好きな萩尾望都さんがキュッとくるものについて書いたエッセイをまとめたもの。年代なのか読んだり観たりしたモノが被るので楽しい。表現に感心。
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(2011.07.19読了)(2011.07.14借入) 漫画家の萩尾望都さんのエッセイ集です。文庫の解説として書いた物がいくつかありますので、それらの作品も読んでみたくなります。手塚治虫さんの影響を受けて漫画家になったというだけあって手塚さんの作品の解説には、力(リキ)が入って...
(2011.07.19読了)(2011.07.14借入) 漫画家の萩尾望都さんのエッセイ集です。文庫の解説として書いた物がいくつかありますので、それらの作品も読んでみたくなります。手塚治虫さんの影響を受けて漫画家になったというだけあって手塚さんの作品の解説には、力(リキ)が入っている感じです。 手塚作品は、「新選組」「アドルフに告ぐ」「ルードウィヒ・B」「ブッダ」と4つの作品が取り上げられてます。「アドルフに告ぐ」「ルードウィヒ・B」は、読んだのですが、残りの2作品はまだ読んでいません。探してみましょう。 萩尾さんが漫画家になることを父親が許さなかったそうで、心理学を勉強したのは、父親との関係を修復したいためだったとか。勉強の成果は、作品に反映されているということです。萩尾さんのファンだった女性のうち、多くの方が「残酷な神が支配する」で、萩尾さんの作品から離れてしまったようです。(うちの神さんと神さんの友達がそうでした。) 残念なことです。 青春時代の愛読書についても述べられています。萩尾さんはヘッセの作品によって、漫画を描き続ける決心をすることができた、とのことです。「デミアン」「春の嵐」「郷愁」。 (僕にとって、生きつづける決心をさせてくれた作品は、ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」でした。高校三年生の時です。) 漫画家は、原稿に追われて海外旅行に行く暇などないだろうと思っていたのですが、スペイン、スイス、ケニア、ガラパゴス、イギリス、アメリカ、等へ行っているようです。その思い出などが述べられています。 萩尾さんは、SF作品も多く書いていますが、ブラッドベリ、アイザック・アジモフ、フィリップ・K・ディック、等の作品の思い出なども書いています。僕はあまり読んでいないので、神さんの本棚から借りて、読んでみようと思います。神さんの本棚には、この人たちの作品がいっぱいあるのです。 ●心理学の本(82頁) 萩尾さんは漫画家になりたかったが、ご両親は、ずっと反対し続けていたので、 「批判する親の気持ちを理解しようと、心理学の本を読んで研究しようとした。」 その結果、解ったことがあった。 心理学書は、人間とは何か?を知りたい人にとっては興味のつきない本だが、テレビの人生相談の本ではないということだ。 ●レーゾンデートル(88頁) 14の頃、国語の辞書を引いていたら、偶然、「レーゾンデートル」という単語が目に飛び込んできた。「存在理由」と、解説がしてある。驚いた。 「存在理由」という単語があり、「レーゾンデートル」という単語があるのだ。それはポピュラーな概念なのだ。そして、存在には、理由があるのだ。理由。 ●中島らもの「アマニタ・パンセリナ」(103頁) これは薬物マニアの話だった。つまり嗜癖の話である。嗜癖だから、オタクである。 キノコを食う。大麻を吸う。サボテンを焼く。酒を飲む。睡眠薬、抗うつ剤、咳止めシロップまである。 徹底している。引け目も悪気も自責もない。化学の実験過程でも読んでいるのかなと思ってしまう語り口なのだが、崩壊の話である。 あぶない男だ。 ●寺山修司(106頁) 寺山さんの感じははじめから、私にとっては大きなお兄さんというもので、それは後々まで変わらなかった。 寺山さんの関心は人の心のありようにあり、応募作を見ながら、詩の一枚一枚をていねいに読みながら、その著者の心の構図を探っていく、というぐあいだった。 ●手塚治虫(147頁) 手塚治虫の、人間や物事に対する洞察力は、やはりずばぬけたものがある。人間に対して、深い興味を持っていたからなのだろう。人間の歴史や生きる意味について、生まれてから死ぬまで、空気を呼吸するように自然に、考え続けていたのだと思う。 ☆萩尾望都の漫画以外の本(既読) 「ストローベリーフィールズ」萩尾望都著、新書館、1976.11.05 「少年よ」萩尾望都著、白泉社、1976.12.25 「月夜のバイオリン」萩尾望都著、新書館、1981.12.25 「戯曲・半神」萩尾望都・野田秀樹著、小学館、1987.10.20 「斎王夢語」萩尾望都著、新潮社、1994.09.20 「左手のパズル」萩尾望都著・東逸子絵、新書館、1995.08.05 「思い出を切りぬくとき」萩尾望都著、あんず堂、1998.04.23 「トリッポンのこねこ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02. 「トリッポンと王様」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02. 「トリッポンとおばけ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02. 「トーマの心臓」萩尾望都原作・森博嗣著、メディアファクトリー、2009.07.31 (2011年7月24日・記)
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私は何のために生きているのだろう。存在しているのだから存在を続けていい。私はためらいながら描き出し、描き続け、今も描いている。萩尾望都があこがれ、求めるものたち。待望のエッセイ集(「BOOK」データベースより) 萩尾さん若かりし頃のエッセイをまとめたもの。 (最近、ガンガン...
私は何のために生きているのだろう。存在しているのだから存在を続けていい。私はためらいながら描き出し、描き続け、今も描いている。萩尾望都があこがれ、求めるものたち。待望のエッセイ集(「BOOK」データベースより) 萩尾さん若かりし頃のエッセイをまとめたもの。 (最近、ガンガンエッセイ本出してますね~。) 今回も、萩尾さん独特の視線を堪能できました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
萩尾さんの思考の断片をのぞかせてもらっているようなエッセイ。絵画、書物、映画、演劇、漫画…萩尾さんのアンテナにひっかかったたくさんの作品を、彼女の目を通して眺める。 やはり凡人ではないな・・・と思ったし、人間をやっていくことのやるせなさを抱え、いとおしむ人なのだと思った。
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30年ほど前のものから最近のものまで、あちこちに載ったモト様のエッセイをまとめたもの。本業ではないから決してうまい文章とは思わないが、実に心にしみてくる。 冒頭の「青緑色の池」には参った。中学生だった頃のある気分がまざまざと蘇ってきて言葉をなくしてしまう。二編目の「先生の住所録...
30年ほど前のものから最近のものまで、あちこちに載ったモト様のエッセイをまとめたもの。本業ではないから決してうまい文章とは思わないが、実に心にしみてくる。 冒頭の「青緑色の池」には参った。中学生だった頃のある気分がまざまざと蘇ってきて言葉をなくしてしまう。二編目の「先生の住所録」。読後涙を止めることができなかった。 長いこと手に取ってないブラッドベリがまた読みたくなった。若い頃読んで、あまりにも鮮烈だった記憶が邪魔をして読み返せないのだ。なんだか怖くて。
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モトさまは面白い。 マンガも小説も面白いけど、エッセイも面白い。 言葉の選択がまるでモトさまの描く漫画のように美しく幻想的で想像力をかきたてる。 ひとつうれしかったのは、モトさまも本を食べ物のように語っていたということ。 そう、本は心の食べ物なのだ。
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文章に萩尾さんのエッセンスがにじみ、萩尾ワールドの一端に浸れる。 交流作家名に意外な名も出てきて嬉しかった。
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