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クロノリス の商品レビュー

3.6

17件のお客様レビュー

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2023/06/07

年明けに読んだ「時間封鎖」がたいへん面白く(現時点の2023年のベスト)、著者であるR・C・ウィルスンに興味を抱きました。ということで、本書は「時間封鎖」より前に発表された作品で、ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作。 2021年のタイで、突如として天を貫く巨大な塔が出現した。2...

年明けに読んだ「時間封鎖」がたいへん面白く(現時点の2023年のベスト)、著者であるR・C・ウィルスンに興味を抱きました。ということで、本書は「時間封鎖」より前に発表された作品で、ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作。 2021年のタイで、突如として天を貫く巨大な塔が出現した。20年先の未来の日付が刻まれたそれは、クロノリスと名付けられ、世界を混沌へと導いていく。なぜなら、クロノリスはその後も続々と現代に送り込まれていったからだ。未来の侵略者による攻撃に立ち向かうべく奮闘する人々。しかし、有効な手段が見つからないまま、時は無慈悲に2041年に迫りゆく。 あいかわらず面白い。ウィルスンは稀代のストーリーテラーですね。「時間封鎖」のときもそうでしたが、異常事象が起こりつつも、基本的には主人公ちかくの人間ドラマが丁寧に描写されます。その人間ドラマと異常事象が交わるときに、物語は佳境を迎えることになります。その点、本書ではちょっとオチが弱かったかな(これは「時間封鎖」のときも少し感じましたが)。物語の運び方がうますぎる分、気になってしまうのかもしれませんね。もうちょっと真相の部分、2041年以降の展開と過去とのつながりについて描いて欲しかったな、という思いがありますが、それはそれで蛇足なのかもしれませんね。

Posted byブクログ

2018/10/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

スコット・ウォーデンは妻のジャニスと娘のケイトリンを連れて、タイでプログラミングの契約仕事をしていたが、その契約が終了しても、プーケットに留まって、悪友のヒッチと遊んでいた。そしてチャンポーンの山岳地帯で爆音を聞いたヒッチに誘われて出かけたが、なんとその場所で最初のクロノリスの出現を見てしまう。それを契機にこの騒動に巻き込まれていく。原因と結果が逆転する。タウ・タービュランスとか、フィードバックとか。色々と難しい理論がでてきたな。でも、面白かった。

Posted byブクログ

2016/02/08

 題名の勝利である。クロノリス。否応なく『2001年宇宙の旅』のモノリスを思い起こすし、それに「時間」がつくのだから、どんな壮大な話になるのだろう。  2021年、タイの山中に四角錐の石柱が突然現れる。タイ南部とマレーシアが「クイン」と名乗る者の軍門に下ったことを賀する碑文が刻...

 題名の勝利である。クロノリス。否応なく『2001年宇宙の旅』のモノリスを思い起こすし、それに「時間」がつくのだから、どんな壮大な話になるのだろう。  2021年、タイの山中に四角錐の石柱が突然現れる。タイ南部とマレーシアが「クイン」と名乗る者の軍門に下ったことを賀する碑文が刻まれていた。しかも日付はちょうど20年後。次に旧ソヴィエトの彫像のように抽象化された非人間的な人物像の石柱がバンコクに現れるが、石柱の出現時の衝撃波でバンコクは壊滅する。続いて、平壌、ホーチミン市、マカオ、札幌、関東平野、中国の宜昌。石柱の出現と都市の破壊がアジアを席巻していく。20年後のクインの軍勢の侵攻を示すとともに、現在の都市をも破壊していく。  プログラマーの「わたし」は最初のクロノリスの出現時に居合わせ、やがて、政府のクロノリス研究機関に加わることになる。プライヴェートには冒頭から夫婦の不仲と離婚の物語が語られ出す。  アジアを席巻するクロノリスは次にどこに出現するのか。クインとは何者で、何のために20年前に干渉しようとするのか。20年後の未来と「わたし」の現在とはどのような関係を結んでいくのか。そして「わたし」個人の物語はどう進んでいくのか。本書の発表は2001年。舞台はその20年後で、さらに20年後からクロノリスが送り込まれるという設定。日本語訳が原書出版と作品の舞台のちょうど真ん中の2011年というのはちょっとした洒落のようなものか。  先が読めないプロットに惹きつけられる。20年前の過去に干渉するということは必然的にクインのいる未来にも影響を与えずにはおかないはずなのだが、クインはクロノリスを送り込むことで未来を望む方向にねじ曲げようとしているのだ。つまり、20年後に示されるであろう圧倒的と思えるクインの力にひれ伏すしかないという思う人々、クイニストたちが現れ、クインの登場を待ち望むようになり、社会は混迷の度を増していく。  この混沌としたタイム・パラドックス状況でいったい未だ存在しない敵とどう戦うのか。時間は2041年、クインのタイ南部とマレーシア征服の時へと迫っていく。  ひとつの作品としては面白いのだが、『時間封鎖』と引き比べると同工異曲的、あるいは『時間封鎖』への習作という感のあるのが若干興をそがれる。まず大きな構造として、人生のかなりの部分を費やすようなスパンの、地球規模の大事件と、主人公の愛情関係の物語を併置する構造、絶望的な状況に陥っていく社会とそれをいささか諦観を持って見つめる主人公、といったあたりである。また、細部のプロットも『時間封鎖』と似たところがあれこれ目についてしまう。  もっともそれは『時間封鎖』を読んでしまっているからで、大胆なアイディアと丁寧な人物描写で読ませる作品であることは確か。

Posted byブクログ

2014/08/03

東南アジアの空気感を見事に描いた時間系SF。 20年先の日付が刻まれた石碑が突如出現。続々と送られる石碑がアジア、ヨーロッパ、アメリカの都市を破壊していく。 つかみどころのない現象の実態に迫るべく研究を重ねる物理学者らの姿。 ◯「タウ粒子統合エネルギー仮説」いったいこれは、...

東南アジアの空気感を見事に描いた時間系SF。 20年先の日付が刻まれた石碑が突如出現。続々と送られる石碑がアジア、ヨーロッパ、アメリカの都市を破壊していく。 つかみどころのない現象の実態に迫るべく研究を重ねる物理学者らの姿。 ◯「タウ粒子統合エネルギー仮説」いったいこれは、なにを意味しているのだろう? 宇宙の仕組みについて、スーがひたむきに考えたことを意味しているのだ。ものごとの根源について考えているときが、彼女はいちばん幸せなのだ。 ◯レイは、臆病者ではなかったのである。孤独な若者ではあるが、その原因の大半は彼の知能の高さにあった。会話をしていても、相手が自分についてこられないと見るや否や、すべての話を途中でやめてしまうのだ。特にいじけた様子を見せるわけではないがー落胆を顔に出すことはあったー自分の考えを他者と分かち合えないことに、哀しみを感じているのは明らかだった。

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2014/02/23

一冊だけ、ぐいぐい系なのが悔やまれる。もうちょっと丁寧に書いていればもっと面白かったろうに。時間もの、タイムパラドックスもので、時空を超えて仕掛けられる戦争が、そこまで遠くない未来というのも良い。でもまあ、ウィルソンにとって、というか大多数のアメリカ人にとってアジアなんてほんっと...

一冊だけ、ぐいぐい系なのが悔やまれる。もうちょっと丁寧に書いていればもっと面白かったろうに。時間もの、タイムパラドックスもので、時空を超えて仕掛けられる戦争が、そこまで遠くない未来というのも良い。でもまあ、ウィルソンにとって、というか大多数のアメリカ人にとってアジアなんてほんっとに遠いおとぎの世界の話なんだなあと実感。ヒッチが良いヤツ過ぎて泣ける(笑)意識の集合体、みたいなところをもっとぐっと、突き進めて欲しかった。

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2013/06/02

願えば願うほど実現しやすくなるといった願望の法則にタイムワープを応用した悪巧みの物語。正直、理系的な話はさっぱり分からなかったが、哲学や文学的な素養でほぼ文脈を繋げることができる。クロノリス出現などドキドキハラハラするシーンはいくつかあるものの、期待していたのはドンパチするアクシ...

願えば願うほど実現しやすくなるといった願望の法則にタイムワープを応用した悪巧みの物語。正直、理系的な話はさっぱり分からなかったが、哲学や文学的な素養でほぼ文脈を繋げることができる。クロノリス出現などドキドキハラハラするシーンはいくつかあるものの、期待していたのはドンパチするアクションものだったのに対し、内容は哲学的な考察に富んだSFミステリーといった感じ。ただ読んでて飽きなかったし、最後までエンディングを楽しみに読めたので、よく構成された内容だったと思う。

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2012/07/11

相変わらず叙情的なウィルスンのSF。場面の描写も然ることながら人の感情の捉え方に他の作家には無い才能を感じる。 この本もSPINシリーズと同様、読後に独特の余韻を感じずにはいられないカタストロフと哀愁を持っているが、今回はそこにもう少し劇場的な演出も含まれているなと感じた。特に...

相変わらず叙情的なウィルスンのSF。場面の描写も然ることながら人の感情の捉え方に他の作家には無い才能を感じる。 この本もSPINシリーズと同様、読後に独特の余韻を感じずにはいられないカタストロフと哀愁を持っているが、今回はそこにもう少し劇場的な演出も含まれているなと感じた。特に登場人物のキャラクターや展開のドラマ性など。もしかすると映画化も意識したのかなという気がするが、これは映像化されても非常に面白い作品になりそうな気がする。 テーマを一言で言ってしまうと、「避けられない人の運命」ということかなと思うが、知っていてもなおその道を進まざるを得ない「人の性」を色んな立場の人たちから丁寧に描いている。 ストーリーとしては、ホーガンの「未来からのホットライン」にもちょっと似ている感じで、そちらと比べるといわゆるSF的な理屈やプロットの完成度は負けているかもしれないが、「運命」というテーマについて十分描ききった傑作ではないかと思う。

Posted byブクログ

2012/06/03

フツーに面白かった! SFとしても面白い。 未来から送られてくる謎のクロノリス。 どうやら将来は送り主の「クイン」に 支配されるようだが、果たして…。 また人間ドラマの小説してもなかなか面白い。 各キャラクターがよく描かれており、 SFも、一つの味付けでしかないような感じもす...

フツーに面白かった! SFとしても面白い。 未来から送られてくる謎のクロノリス。 どうやら将来は送り主の「クイン」に 支配されるようだが、果たして…。 また人間ドラマの小説してもなかなか面白い。 各キャラクターがよく描かれており、 SFも、一つの味付けでしかないような感じもする。

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2012/01/10

突然未来からモノリス送られてきた。送り主はクイン。巻き込まれた主人公は次の地点を予測する研究などに深く関わって行く。展開が地味で時間経過が早いため、説明文が多い。ストーリーは面白いし、オチもなかなか。

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2011/11/20

サイエンスフィクションのお好きな人には こたえられない一冊かもしれませんね。 近未来から 現代へ不気味なメッセージが 地表を破って世界各地に出現する。 近未来の支配者からのものか。 支配を磐石にするためのパフォーマンスなのか。 それに立ち向かう科学者たちの運命は? 閉塞状...

サイエンスフィクションのお好きな人には こたえられない一冊かもしれませんね。 近未来から 現代へ不気味なメッセージが 地表を破って世界各地に出現する。 近未来の支配者からのものか。 支配を磐石にするためのパフォーマンスなのか。 それに立ち向かう科学者たちの運命は? 閉塞状況にある世界に不満を持つ若者たち。 彼らは近未来の指導者へ傾倒していく。 サイエンスフィクション(SF)も文学に近づいてきた? そんな印象も。 そんなことはない? ハードSFは、そのままSFでいいではないか。 楽しければいい。 宇宙の彼方へ、 はるか古代へ、 別世界へ。 ファンタジーかはたまたサスペンスか。 それも問うまい。 わたしが何かを感じ ご機嫌な気分になればいい。

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