千年の森をこえて の商品レビュー
生まれては消えていく生命を営んできた森を舞台に、支えあう小さな生き物たちと、千年もの間壺に押し込められてきた魔性の生き物が目覚め、出会ったときに起こったのは…。短い章で語られていくそれぞれの物語が一つになっていく様は見事。憎しみと愛はそれを抱く者にエネルギーを与えるが、憎しみの方...
生まれては消えていく生命を営んできた森を舞台に、支えあう小さな生き物たちと、千年もの間壺に押し込められてきた魔性の生き物が目覚め、出会ったときに起こったのは…。短い章で語られていくそれぞれの物語が一つになっていく様は見事。憎しみと愛はそれを抱く者にエネルギーを与えるが、憎しみの方は何も生み出さないんだなあと実感できる作品。なめらかな曲線の挿絵も美しく力強い。
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昔、ラミアの眷属である”ヌママムシの婆”は、自分がかわいがった養女ナイトソングが鷹男(ホークマン)のもとに去ったことに恨みを抱き、ナイトソングを取り戻そうと、彼女の愛する家族から引き離した。結果ナイトソングは絶望のあまり命を落とし、ヌママムシの婆自身はホークマンの手によって甕の中...
昔、ラミアの眷属である”ヌママムシの婆”は、自分がかわいがった養女ナイトソングが鷹男(ホークマン)のもとに去ったことに恨みを抱き、ナイトソングを取り戻そうと、彼女の愛する家族から引き離した。結果ナイトソングは絶望のあまり命を落とし、ヌママムシの婆自身はホークマンの手によって甕の中に封印されてしまう。 それからおよそ千年の時がたち、同じ森の中には、ある老犬が極悪人の飼い主に鎖でつながれて飼い殺しにされていた。その森に身重の猫がやってきて、老犬のもとに身を寄せる。やがて猫は子どもを産み、ひどい環境ではあったが互いを思いやりあいながら家族として絆を育んでいく。 ところが猫の存在を飼い主に知られ、母猫と子どもの片割れが川に放り込まれてしまい…… アメリカ先住民族の伝説と、ひどい暮らしを強いられている老犬と猫たちの愛に結ばれたつながりとが、短い章立てで視点と時代とを切り替えながら一つの詩的な物語として織りあげられている。訳者があとがきで書いているように、ずっと土の中に埋まった甕の中に閉じ込められているだけのヌママムシの婆の存在感が印象的。(事実物語の展開上大きな役目を果たす)
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