「習慣病」になったニッポンの大学 の商品レビュー
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日本の大学改革について、特に「お金」に着目して論じられた本。戦後からの大学改革がどのような考え方のもとに進められたのか、社会・経済的な時代背景とともに論じている。 高校生を読者として想定し、分かりやすい平易な文章となるように書かれており、それでいて多くを学べる本。 教育問題に関心のある人だけでなく、「今の大学はダメだ」と思ってる人にこそ勧めたい。 著者の主張を要約してみると-------------------- 日本では、我が子の大学の費用は親が負担するのが当然という発想がある(親負担主義)。 それが、 ・日本の大学の8割を占める私立大学で、 ・税金による補助が運営コストの1割に満たず、 ・私立大学の経営が学生からの授業料に依存している という事実によく表れている。 親に費用を負担してもらうから、(世界的にみて異常なくらい)18歳進学が多い(18歳主義)。30歳の子供の大学授業料を負担しようという親は少ない。つまり、社会人が自力で大学で学び直そうとしても授業料負担が大きすぎる。結果、社会人の学び直しが進まない。 親に費用を負担してもらうから、「卒業できません」という事態を避けなければならない(卒業主義)。大学も、なんとか卒業させてやろうとする。結果、卒業しやすい(出やすい)システムになってしまう。 これらの根底にあるのは、大学のコストを、誰がどれだけ負担するか(税金?親?)ということ(資源論)。 非常に重要な問題なのに、「習慣病」のように当たり前になってしまい、危機感を持って改革するほどに問題視されていない、という点が問題。 制度だけで改革するのは、限界がある。資源論から大学改革を考えるべき。 --------(要約終わり)--------------- 以上のようなことが、データを使いながら、分かりやすく説明されている。 私は読めてよかった。 ぜひいろんな人に読んでみてほしい。
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大学改革の必要性が叫ばれるものの、大学改革は大学関係者だけの閉じられたテーマになっている。しかし、問題となっている「日本的大衆大学」は、国際標準と大きく異なる「日本的家族」や「日本的雇用」と大きく関ってできたものだ。その結果、18歳で入学し、高い授業料を支払い、所定の年限で卒業し、就職するという行為は、誰もが深く考えない習慣になってしまっていて、これが日本の大学改革を困難にしている大きな壁であると著者はいう。 高い授業料を取り上げてみると、私立大学の授業料の抑制と教育の維持向上のため、1976年に私立学校振興助成法が制定されたが、その結果、私立大学の学費の高騰を招いたのは皮肉ではある。しかし、規制の副作用として予見できたはずだ。国立大学の学費も併せて高騰したが、私的利益(親の所得)に支えられている現在の日本の大学システムをそのままに、大学の公共性を語る制度論や精神論がはびこることに違和感を感じるのは自然なことだ。 「大学政策を構想するということは、社会のあり方を構想すること」(p.274)。このような極めて基本的な前提に立って、大学問題を扱うべきであろう。歴史と比較を通して、常識を疑ってみる。本書は、これから学問に取り組もうとする大学生に対し、あたりまえのことに「懐疑すること」の意味を伝えるとともに、「日本を変える」意識を持たせようとする意図が感じられる。
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序章から第6章を読むことで大学制度と大学政策の基本的な流れとポイントを把握することができる。様々な理由で時間を割くことのできない多くの大学職員に読んでほしい本だ。すぐに読み終えられるだろう。 しかし、終章の「大学をみんなに解放しよう」に書かれている主張に、同意する勇気はなかなか...
序章から第6章を読むことで大学制度と大学政策の基本的な流れとポイントを把握することができる。様々な理由で時間を割くことのできない多くの大学職員に読んでほしい本だ。すぐに読み終えられるだろう。 しかし、終章の「大学をみんなに解放しよう」に書かれている主張に、同意する勇気はなかなか持てない。財政基盤に裏付けされた公共性の議論の中で、大学政策を論じる場合、社会福祉政策との兼ね合いなってしまいそうだからだ。生涯大学進学率を100%にする福利厚生より、医療や児童福祉の命の問題にどうしても限りある資源を投下するべきだと思ってしまう。はたして日本はどこまで高福祉・高負担の国家になれるのか。 著者のいう、理想像に近づけるために、現状との折衷案で、現在の奨学金制度を抜本的に設計し直すくらいの改革政策を検討してはどうだろう。特に本書では提起されていなかったので。
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高校生向けに書かれているため、わかりやすく また、興味を惹かせる内容だった。 矢野さんの「高等教育の経済分析と政策」も並行して読んでいたけど、主張内容はほとんど同じでよりわかりやすくしたものという印象を受けた。 大学教授は、自分の研究を高校生にも説明できるようにすることが必要があ...
高校生向けに書かれているため、わかりやすく また、興味を惹かせる内容だった。 矢野さんの「高等教育の経済分析と政策」も並行して読んでいたけど、主張内容はほとんど同じでよりわかりやすくしたものという印象を受けた。 大学教授は、自分の研究を高校生にも説明できるようにすることが必要があると思う。もちろん、理論的な根拠も必要で、専門家からの批判に対しては、きちんと答えられる必要もある。しかし、論文を出して終わりにするのではなく、その説明を一般にできるかがこれから重要になると思う。 そういう意味で、矢野さんのこの本は模範的な印象を受けた。
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多くの大学関係者に読んで欲しい本です。 この本を読むと、現在の大学が抱える課題が40年前から変わらないこと、そしてなかなか解決できない理由を比較的簡単に理解することができます。 ベテラン関係者はこれまでの責任を自覚し、若手関係者は過去を未来につなげるために読んで欲しいです。
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戦後の経済動向と「大学改革」の動きを丹念に辿りながら、日本の「大学改革」を論じた好著。大学は公共の場として国民皆に開放されるべきという著者の主張に賛同したい。大学にもっと予算を配分し、大学で学びたいと思っているすべての人々がタダで知識やスキルを身に付けることができるようにする、そ...
戦後の経済動向と「大学改革」の動きを丹念に辿りながら、日本の「大学改革」を論じた好著。大学は公共の場として国民皆に開放されるべきという著者の主張に賛同したい。大学にもっと予算を配分し、大学で学びたいと思っているすべての人々がタダで知識やスキルを身に付けることができるようにする、そうした資源配分政策こそが「大学改革」の根本にあるべきである。つまり、国民の税金をどのように中長期的に活かしていくのかについての議論が欠けているとの主張は、まさに正論である。
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矢野先生が高校生向けに書いた本。 高校生向けというのは編集部の方針とのことだが、客観的データ・数字に語らせる、経済で教育を考える手法は他の学術書と同じ。 タイトルの意味は、新入生18歳主義、卒業主義、授業料親負担主義の「日本的大衆大学」の三点セットが習慣病となり、日本の大学改革を困難にしていることを指す。 さらに、 ・法制度改革の段階から次の新しい段階(「質」と「経済資源」)に進むためには、国民のみんなに語りかける未来の大学構想が必要(p231)。 ・「~しなさい」改革(文科省提案)に右往左往することなく、大学の個別事情に応じて、大学が自主的な努力をしなければならない(p241)。 ・生涯進学率100%を目標にした大学設計が必要(p263)。 ・資源→制度→精神(理念)という思考枠組みが何よりも大事(p273)。 など、矢野先生が大学人のみならず広く社会に向けたメッセージを送られていることがわかる。
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