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追悼のしおり の商品レビュー

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2012/05/15
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※このレビューにはネタバレを含みます

マルグリット・ユルスナールが自分のルーツを辿る3部作の一作目。 母方の家系について書かれている。 母の出産後の死に始まり、いろいろな人の死が登場する。 自分の感情や境遇を語るよりも家系をたどることで、その人達の死が自分に何を残し、どう自己形成に影響したかを考え、それによって自己存在を確認したのかもしれない。 自己認識とは己が社会でどう生きるかを決めることでもあると思う。 私たちは時々自分自身について、考え悩む。 が、それは「私が私が…」となりがちである。 マルグリット ユルスナールのように、自分についてはあえて控え、家族の過去のつながりへと考察を深めることも自己理解の助けではないだろうか。 それにして、決して楽しいことばかりでない家系の物語だが、言葉運びや描写が淡淡として情緒的に美しい。 無論、翻訳者の岩崎力氏の文才もある。 ゆっくりと味わいたい作品。

Posted byブクログ