認知症の人々が創造する世界 の商品レビュー
認知症って子供に戻っていくという表現をされがちだけど、その人がそれまで経験したことが一つ一つの行動につながっているということを理解して、丁寧に読み取っていく筆者の辛抱強さ、すごかった。 良い意味で、個人的な感情や認知症の人個人に対する責任を持たない人だからこその視点だったと思う。
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精神病院内の認知症専門病棟に入院している患者に密着して、認知症のお年寄りの行動を観察し、分析した本。 かなり重度の認知症の方々で、言葉が全く出てこなくなった人、自分の足と隣に座っている人の足の区別がつかなくなっている人、同じ棟に入院している他人を自分の伴侶と思い込んでいる人などな...
精神病院内の認知症専門病棟に入院している患者に密着して、認知症のお年寄りの行動を観察し、分析した本。 かなり重度の認知症の方々で、言葉が全く出てこなくなった人、自分の足と隣に座っている人の足の区別がつかなくなっている人、同じ棟に入院している他人を自分の伴侶と思い込んでいる人などなど。 どんなに重度の認知症でも、病棟という限られた場所の中でも自分の居場所を自ら決め、色々な小さな諍いがあっても他者との距離間を上手に取りながら暮らしている。 仲裁役がいたり、注意する人がいたり。でも、相手はそれを理解できなくて、堂々巡りになってしまったり。 何かちょっとした騒ぎが起きると、野次馬根性が出るのか、「なに?なに?」的に集まってきたり。 認知症でも、他者とのコミュニケーションを取りたいという気持ちは残るし、自分が若い頃暮らした地域や自分の仕事を病棟内に仮想に作り暮らしている。 それにしても、この病棟はかなり認知症の方々が自由に過ごしている。そぞろ歩き良し。寝転んで良し。床を延々とスリッパでこすっても良し。全員が重度の認知症だということもその理由ではあるのだろうが、私の職場でこのような状況だったら、割合としっかり理解できるお年寄りから即、クレームがつくだろう。 重度の認知症のお年寄りの気持ちも尊重しながら、そういったクレームにならないようにやんわりと介入する。 そこのところが、職員としては難しいところ。
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看護職の著者の認知症での介護施設でのお年寄りたちの暮らしを丹念に再現することで見えてきたものについて書かれている。よくぞ丁寧に寄り添い再現してくれたと思う 認知症というとどうしても自分でなくなる恐怖というものがあったけれど、こんな風に見てもらえたら、ケアされたならと少しは安堵はで...
看護職の著者の認知症での介護施設でのお年寄りたちの暮らしを丹念に再現することで見えてきたものについて書かれている。よくぞ丁寧に寄り添い再現してくれたと思う 認知症というとどうしても自分でなくなる恐怖というものがあったけれど、こんな風に見てもらえたら、ケアされたならと少しは安堵はできた 「人間という社会的動物」「虚構であっても自分の存在の確からしさの保障をもとめずにはおられないという人間の姿」というのが印象に残った
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「自分自身と向き合ってしまうことが、認知症の人々の介護にとってもとも根源的な困難さなのだと思う」と著者は言う。 障害者、特に知的障害を持つ人々、自閉症児と関わる時の苦しさが実は「自分自身と向き合ってしまう」ことでした。 この苦しさは何なのだろう・・・と常に思っていましたが、著者の...
「自分自身と向き合ってしまうことが、認知症の人々の介護にとってもとも根源的な困難さなのだと思う」と著者は言う。 障害者、特に知的障害を持つ人々、自閉症児と関わる時の苦しさが実は「自分自身と向き合ってしまう」ことでした。 この苦しさは何なのだろう・・・と常に思っていましたが、著者の言葉でうろこが落ちたようです。 認知症の人と向き合う時、どうしても人生とは何なのか、生きるとは何なのかと自分につきつけてしまう。困難さは自らにあるということなのでしょうか。
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