プロテスタント教理史 の商品レビュー
著者の渡辺信夫氏はカルヴァン研究者であり、プロテスタントの金字塔と称される『キリスト教綱要』の訳者として著名である。本書は著者が長年教鞭を執っていた日本キリスト教会神学校の教理史の授業ノートをもとにまとめたもので、範囲は宗教改革から現代まで。中世までの教理史学習を既に終えたひとを...
著者の渡辺信夫氏はカルヴァン研究者であり、プロテスタントの金字塔と称される『キリスト教綱要』の訳者として著名である。本書は著者が長年教鞭を執っていた日本キリスト教会神学校の教理史の授業ノートをもとにまとめたもので、範囲は宗教改革から現代まで。中世までの教理史学習を既に終えたひとを主な対象としているという。その意味では確かに内容堅固であり、「寝転がって」読むような本では決してない。 本書が日本人神学者の手による数少ない教理史として、日本の神学界の新たな財産であることは言うまでもない。しかし神学が学者や牧師たちの占有物でなく、すべてのキリスト者のものであるように、本書も福音宣教に重荷を持つあらゆる信徒が目を通すべき書物であろう。 「私は学者としてでなく、神学教育の使命を与えられた伝道者としてこれを書いた。したがって、ここには福音の宣教に携わる者にとって有用な知識だけが書かれていると自分では思っている」(あとがきより)。 今日のキリスト教界は多くの困難な課題に直面している。そして多種多様な神学的潮流を生み出し、ある種の「混乱状況」に陥っていると言って過言でない。そのような中、先達たちが信仰的・社会的戦いの中で獲得してきた歴史的遺産に学ぶことの重要性は、ますます増しているのではないだろうか。
Posted by
- 1